“クレイジー”日本債券ファンドに海外メディア注目 1年で398%高騰も、今年の成績は?
ブルームバーグは、英ガーンジー島の投資ファンド「Japan Synthetic Warrant Fund」が、昨年398%高騰し、この年「一番成績の良かった日本債券ファンド」となったと紹介している。同ファンドの規模は1460万ドルで、日本債券を対象とした170以上の同業界の中でも4番目に小さいという。
しかし今年は、2月までで3.2%の伸びにとどまっているという。
【クレイジーなファンド】
同ファンドは、購入した日本債券(新株予約権付き転換社債)を買戻し、オプション付きで割引転売しておき、期限が来るか原資が値上がりした時点で買い戻す。いわば原資の値動きを増幅するようなもので、投機性が高い。
昨年は日本株の高騰に伴い、前述のように5倍もの膨張を見せたほか、2012年にも101%の伸びを記録している。一方で2008年には94%下落しており、“オールオアナッシング”と言って良い代物である。同ファンドを扱うロンドンのマネージャーは、「クレイジーなファンド」と評している。日本では、この手のファンドの競合者が比較的少ないのも魅力だという。
【息切れするアベノミクス回復】
ファンドの運命は日本の株高・円安にかかっている。しかし今年、日経平均は3月10日時点で15120.14円と、年初から7.2%ダウンであり、1989年のピークの半分以下だ。2月のブルームバーグの調査によると、年末までに18000円まで上がると予測されているとのことだが、最近の日本経済は「下方修正」という単語が良く付いて回る。
10日発表された2013年10~12月期の実質GDP改定値は0.2%増(年率0.7%)で、速報値の0.3%増(同1.0%)から下方修正された。2013年全体でも1.6%から1.5%に下方修正である。1月の経常赤字は過去最大の1.5兆円に拡大した。さらに、4月には消費税増税が控えているが、それに向かっての「駆け込み需要」についてさえも、同期の個人消費が0.5%増から0.4%増に下方修正されたことをBBCは指摘する。
またBBCは、中国の統計も不安視されていると報じた。2月の貿易収支は、黒字119億ドルとの予想に対し、229.8億ドルの赤字であった(昨年同月は黒字148億ドル)。インフレ率も1月の2.5%から2月には2%に鈍化し、デフレ不安がささやかれているという。
【バクチを外した元五輪選手】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(「マネー・ビート」ブログ)は、バレストラ・キャピタル・パートナーズが先月、日本の株高・円安に賭けて、6%を超える「4年間で最悪」の損失を出したと報じている。これは1972年ミュンヘン五輪のフェンシング選手、ジェームズ・メルチャー氏のヘッジファンドである。同ファンドの資産は15億ドルで、昨年は8%の利益を上げていたが、今年に入ってからは2ヶ月で9%の損失だという。2007年には200%の利益を上げたこともあった。
しかし、メルチャー氏は依然、「日本の現政権、中央銀行、そして有権者は日本株式会社を長期的な低迷から脱却させるための決死覚悟の戦略で足並みをそろえているように見える」として先行きを楽観、日本株への投資をさらに増やしているという。
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