日本の基本給、2年ぶりに微増 海外紙は消費増税の悪影響を懸念
厚生労働省は4日、1月の勤労統計調査で、ボーナスや残業代を除いた所定内給与(家族手当などは含む。従業員5人以上の企業についての速報値)が、前年同月比0.1%増になったと発表した。2012年3月以来、22ヶ月ぶりのプラスだ。
【購買力が上がったとはいえず】
ただし、除外されているボーナスや残業代は下がったため、それら含めた収入総額としては0.2%の減少である。
また、パートタイム労働者の基本給は1.1%上昇したが、フルタイム労働者(労働人口の約71%)については変化なかった。さらに、速報値なので、後でさらに下方修正される可能性もある。国内報道では、賃上げというより、正社員の採用が増えたため全体として給与支払額が増えただけ、とも報じられている。
フィナンシャル・タイムズ紙は、現在はパート労働者の人手不足で賃金が支えられているが、4月の消費税増税に伴って需要減となり、残業代も減ってゆくだろうと示唆している。
また、1月の消費者物価は1.3%増となっており、日銀はさらに2%の目標を掲げている。賃金増が物価増や増税に追いつかなければ実質的には賃下げと同じであり、安倍政権が目指しているような、物価・賃金・経済成長が相互に強めあう好循環にはならないと各紙は述べる。
【儲かっても昇給渋る企業】
安倍政権は、アベノミクスの鍵を握る部分だとして、企業に賃上げを要求し続けてきた。しかし、デフレ時代の恐怖を引きずる産業界は、一時的なボーナスはともかく、固定的な昇給には及び腰である。
現在ちょうど春闘のシーズンであるが、各紙は、今年度過去最高益を見込んでいるトヨタ自動車が、月4000円(1.15%)の基本給増額とボーナス6.8ヶ月分という組合要求に対し、難色を示し続けていることも報じている。会社側としては、保険その他の負担を考えると年間60億円の潜在的コスト増になるとの言い分だ。組合側は、両者間に「いまだ大きなギャップがある」と嘆いている。
一方、フィナンシャル・タイムズ紙(共同通信を引用)によると、パナソニックは、「議論は続いており何も決まっていない、と同社は言うものの、同じ4000円増の労働組合要求を受け入れる構えを取りつつある」とのことだ。ブルームバーグによるとローソン(新浪CEOは政府の産業競争力会議メンバーであり政権に協力的)も賃上げを計画している。
また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると大和証券グループは賃上げのほか、定年を70歳に引き上げるという。
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