日本の貿易赤字、なぜ過去最悪?“古い理論は通用しない”構造変化を海外紙が指摘

 財務省が20日発表したデータによると、1月の貿易収支は2.79兆円の赤字で、昨年同月の1.63兆円赤字を大きく上回った。その1.63兆円も、1979年の単月統計開始以来最大だったものであり、大幅な記録更新だ。なお、1月は中国やアジア圏の旧正月を含め、正月休みで需要が落ち込む時期であり、商品販売は減る傾向がある(対中赤字もやはり過去最大)。

 また、ブルームバーグの調査した28エコノミストの予想中央値、2.49兆円も上回った。

【伸びない輸出】
 輸入額は8.43兆円で前年同期比25%増なのに対し、輸出は5.25兆円で9.5%増にとどまった(ブルームバーグ予想はそれぞれ22.7%と12.7%)。各紙、円安傾向にもかかわらず輸出の伸びが鈍いことを指摘している。輸出の9.5%増というのも円安により換算額が膨れたためで、数量ベースでは、輸入8%増に対し、輸出は4ヶ月ぶりの減少となる0.2%減であった。

 輸入については、原発停止に伴うエネルギー輸入増と、消費税増税前の駆け込み需要が指摘されている。原油輸入は前年比28.1%増、液化天然ガスは21.4%増であった。ブルームバーグによると、化石燃料による火力発電量は1月に新記録となっている。ヨーロッパからの自動車輸入も26.4%増となった。

 専門家は4月の増税実施後、需要減に伴い貿易赤字は減ると見込んでいるが、当然それは経済への打撃を意味する。

【燃料輸入を減らそうとしても太陽電池も輸入】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、安倍首相は円安を経済回復の鍵と喧伝していたが、大手メーカーの海外移転傾向により円安が輸出上のメリットにならず、アテが外れたと述べている。

 フィナンシャル・タイムズ紙も、経済学のセオリー上起こるはずの「J字回復」が起きていないと警告した。円安で海外製品の輸入コストが上がったとしても、それならば消費者が国産品に流れるはずで、一旦収支が悪化してもその後、元の状態以上に回復するという理論である。政府に近いある専門家は「これは非常に驚くべきことです。経済にもっと深い変化が起きていて、円安のコストと利益についての古い仮定がもはや通用しないということなのか、検討する必要があるかもしれません」と語っている。

 同紙は、日本の家電業界の競争力低下に伴い、従来は国内製の独壇場だった電子機器なども輸入が増加する「輸入の構造変化」が起きていると示唆する。また、燃料輸入増を嫌って太陽光発電などに移行しようとしても、1月は中国製の太陽電池パネルの輸入が大きく増えているという点を指摘する。

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Text by NewSphere 編集部