日銀の“サプライズ”で株価急伸 しかし海外メディアは効果を疑問視
日本銀行は18日、3月に期限を迎える「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」を、1年間延長すると発表した。さらに規模も2倍に増大し、民間銀行に対し、企業や家計への貸出し促進を期待する意向を示した。
日銀の発表を受け、市場は前日までの鈍い状況からから一転。日経平均は3.1%の急伸を見せ、ドルは102.74円と5円以上上昇した。
【株価急伸の理由は?】
アベノミクス最大の目標である「物価上昇2%」達成を目指すべく、日銀は昨年4月、「異次元緩和策」を打ち出した。以来毎月7兆円の国債を買入れ、円安へと圧をかけ、輸入燃料の高騰を通じ物価上昇を狙う努力を続けている。
しかしそれでも、今のところその効果は薄い、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じる。国内民間銀行の預金残高は貸付額を史上最高レベルで上回っており、融資が活気ある状況とは言えない。
そこで、0.1%という超低金利を保ったまま期限の延長に至った同策だが、延長自体は既に予測されていたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘する。ところが「規模の拡大」は想定外だったため、株式市場は驚きを見せ、急伸したというのが各方面の見方であるらしい。
しかし市場が驚いたのは、追加策発表に対する期待がそもそも低かったからに過ぎない、と同紙は分析する。さらなる緩和は想定内だったとはいえ、発表は早くとも同策が期限を迎える3月以降と見られていた。それまで日銀が楽観的な発言を続けていたからである。それが、今この時期に発表されたことで、市場に心理的効果をもたらしたというわけだ。
【海外各紙は効果を疑問視】
「株価は好反応を示すも、本当の効果はまだ様子見の段階」とウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘する。
この策を通して行われた貸付額は、昨年末で9兆1660億円。日銀の目標としていた13兆円にまったく届いておらず、融資活動の停滞を顕著に反映している。バークレイズ証券主任エコノミスト森田京平氏は、今回の効果も限られた程度にとどまるだろう、との見方を同紙に示している。
フィナンシャル・タイムズ紙も、すでに十分緩い策のさらなる緩和にどれほどの効果があるのか、と疑問を呈している。
【お金がないのではなく、借りたい人がいないのでは?】
民間銀行にはすでに十分資金があり、融資に何の問題もない。それでも貸付額が伸びないのは、融資への需要自体が伸びないからだ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘する。
フィナンシャル・タイムズ紙も、「緩和と貸出しの増加に明確な因果関係はない」と語る専門家の言葉を伝え、そもそも企業側に融資への需要がないのが一番の原因、と同様の見解を示している。