日本、外国人労働者本格活用へ緊急措置 五輪、復興…建設業界の人手不足に対応

 日本の建設業界における労働力不足が深刻化している。不足を補うため政府は外国人活用の拡大に向けて動き始めた。

【労働力の不足が経済復興計画にも影響】
 厚生労働省によると、建設業界における労働力不足は1994年以来最悪で、11月の調査では41%の建設業者が作業員不足を訴えた。2011年東日本大震災以降の復興工事、アベノミクスによる公共事業の増加などの影響で、労働力不足はただでさえ深刻だが、2020年東京オリンピックに向けてさらなる不足が予想される。

 菅官房長官は24日の記者会見で「今年度内に外国人の活用について緊急措置を定める」とした。ブルームバーグは、日本で現在外国人労働者の占める割合は1%で、高齢化によって減少する労働力は安倍首相の経済復興計画にも影響を及ぼしかねない、という見解を示した。

【建設業界は外国人雇用を敬遠】
 移民法では、人材育成、発展途上国に技術を伝える一端として、外国人を「技術研修員」として最長3年まで雇うことが可能となっている。ただし日本の建設業者は、昔から外国人を雇うのを敬遠してきたという。

 大手建設業者の現場監督はその理由として、共同通信のインタビューに対し「言葉の壁があり技術習得が困難」と話したことを、フィリピンのニュースメディアABC-CBNは報じている。

 また東京の下請業関係者は同様に、「複雑な作業で怪我をしたり間違えたりしないように、海外の研修生には安全で簡単な作業を任せている」と実状を述べたという。2012年だけでも、繊維工業、機械・金属産業ともに1万人以上の研修生を収容したのに対し、建設業界では4,500人にとどまった。

 一方、一般請負業者幹部は「外国人研修生を雇うことを考える企業が増えている」と話す。外国人雇用に向けて積極的な動きがあることも確かで、研修制度が目標とする「外国人に専門的な技術作業を任せる」企業が増えていると指摘した。

【外国人雇用に対する国内外の不安】
 外国人活用拡大の一方で、政府関係者は上限を設けずに外国人雇用機会を増やすことに対して慎重な姿勢を示している、とABC-CBNは報じた。2008年世界金融危機以降の不況で職を失った多くの労働者の送還費用、失業手当を負担することになったことが背景にあると見ている。

 さらに、外国人労働者の大幅な流入によって建設業者が将来的に外国人に依存してしまうことや、給料の安い外国人労働者の雇用によって全体の給料が下がることなど、建設業界、日本人労働者の間でも不安は払拭しきれないという。

 外国人労働者の側にも懸念はある。ABC-CBNは、研修制度を「日本人労働者に敬遠される単純で過酷な作業をさせる外国人を雇うための隠れ蓑」と批判する評論家の意見を共同通信より取り上げた。

 さらに、大事業は下請け業者に外注されるため、雇用主の説明責任が曖昧であることなど、建設業界での労働関係は複雑であることが多い。外国人を増やすために研修制度を拡大するのであれば、参加者が適切な賃金を確保して安全な環境で働けることを確かめるシステムが必要になってくると指摘した。

 雇用主、日本人・外国人労働者それぞれの懸念をどのように払拭していくのかが今後の課題となる。

労働移民の社会史―戦後ドイツの経験

Text by NewSphere 編集部