全国9か所全てで景気回復報告 海外紙、“鍵を握る指標は「機械受注統計」”
日本銀行は16日、地域経済報告(さくらリポート)を発表し、2005年4月の同レポート公開開始してから初めて全国9地域全てで「回復」という言葉を使い、ほとんどの地域経済は上向いているとの判断を示した。
内閣府による16日の発表では、企業の設備投資の指標となる機械受注統計は11月、前月と比べ9.3%も跳ね上がった。これはウォール・ストリート・ジャーナル紙や日本経済新聞のエコノミストの予想であった1.2%を大きく上回っている。
各月の機械受注額合計は4ヶ月連続して8000億円を超え、11月には8826億円と2008年7月以来最高を記録した。
【強い経済回復の鍵を握る指標】
企業による設備投資は、デフレ脱却のため安倍晋三首相がすすめるアベノミクスの弱点だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。安倍政権は景気刺激予算を投入し、日銀は大規模な金融緩和策を行ったが、民間企業は政府主導の景気底上げに懐疑的だった、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。またロイターは、政府や中央銀行の多くの関係者が、設備投資は雇用創出に拍車をかけ、給料の引き上げ、消費意欲の向上につながるなど、経済成長に不可欠な要素だとみていることを挙げている。
長引くデフレはこれまで、企業に投資や賃金の値上げを抑制させてきた。投資をするとしてもコストを抑えることができる海外、特に新興国に向けられることが多かった、とロイターは指摘している。しかし、機械受注が5年ぶりの急激な増加をみせたことは、企業が投資と賃金の増加に動く兆候とも言えるようだ。エコノミストは、「円安により企業利益が増加し、経済の見通しが明るくなっていることで、設備投資が十分に拡大されることが期待できる」と予想している。
実際、東芝は夏までに、西日本のメモリーチップ工場を300億円かけ、拡大することを決めた。さらに3月までには、その他に4000億円の設備投資を検討しているという。また、セブンイレブンは2014年度に、前年度の1500店舗を上回る1600店舗の開店を計画しているそうだ。
【日銀が金融緩和策を縮小する可能性も】
好調な経済の数字は、消費税増税後の経済への悪影響を軽減するための、日銀によるさらなる金融緩和策実行について確実性を希薄にしている、と海外各紙はみている。また黒田晴彦日銀総裁もこれまで、増税の影響が予想よりはるかに深刻でなければ、それに対処するためだけに日銀が動くということはない、と繰り返し発言している。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日本経済は回復傾向を続け、4月の消費税増税による消費の落ち込みにも耐えることができるだろうとみている。黒田氏は、「経済は、消費税増税による駆け込み需要や、その後の反動にもかかわらず緩やかな回復傾向を維持すると思われる」と述べた。