アベノミクス円安で明暗 苦しむ韓国輸出企業、日本の不動産投資狙う中国富裕層
韓国の企画財政部は8日、韓国経済について分析した報告書を発表し、円安および相対的なウォン高が韓国経済にとって大きなリスクになっていると報告した。アベノミクスに誘導された円安によって、海外における日本企業の利益は拡大し、競争力も大きく向上する一方、ウォン高によって韓国企業の海外での競争力が低下しつつあるためだ。
【韓国にとって、円安はまるで津波 中国メディア報道】
日本と韓国の経済構造はともに外需主導型であり、競合する産業も多い。2007年から11年にかけて円高が進行し、円は11年10月31日に戦後最高値となる1ドル=75円32銭まで急伸した。日本の輸出企業が円高によって競争力を削がれるなか、韓国はウォン安を背景に07年から11年にかけて輸出を急激に伸ばし、輸出額で世界第7位にまで躍進した。
しかし、12年末に安倍政権が発足すると、急激に円安が進行。13年第3四半期には、韓国の輸出企業の営業利益率は0.6ポイント減の5.1%にまで低下した。韓国の研究機関によれば、円安によって最も大きな打撃を受ける産業は機械、石油化工、鉄鋼、電子部品などと見られている。円が対ウォンで10%値下がりするたびに、韓国の鉄鋼業の輸出額は6%減少し、機械、石油化工は2%減少する見込みだ。
中国経済網は「技術力の高さが世界的に認められている日本の製品が、円安によって価格競争力を兼ね備えれば、韓国は日本に太刀打ちできなくなる」とし、韓国経済にとって円安の進行は「まるで津波のようなもの」と形容している。
【日本は小売業や観光業にも円安の恩恵が波及】
通貨高に苦しむ韓国とは対照的に、日本経済は円安による恩恵を享受している。円安が進んだことで外国人訪日客の旅行コストが低減したこともあり、13年に日本を訪れた外国人客は初めて1000万人を超えた。1000万人の訪日外国人がもたらす経済効果は約3兆3000億円に達すると言われ、日本の小売業や観光業にも円安の恩恵が波及している。
また、中国市場では日本車の販売が極めて好調だが、これは12年末から約1年間で円が人民元に対して24%以上も値下がりし、日本の自動車各メーカーにとって値下げ余地が生まれたことが一因だ。
【円安が中国の不動産バブルを崩壊に導く?】
円安はそもそも日銀の金融緩和によるものだが、中国でも円安による悪影響に対して警戒の声があがった。環球時報は、日本発のホットマネーが中国国内の不動産に流入し、バブル崩壊のリスクが生まれると報じた。
一方、騰訊財経は、中国の富裕層が日本の不動産に注目していると報じた。土地が国家の所有物である中国では、土地を購入しても所有権を手にすることはできず、最長70年間の専用権が手に入るだけだ。同紙によれば、子どもや孫のために財産を残したいと願う中国人たちは、円安を機に、日本の不動産への投資に狙いを定めているという。