こんなに現金を持ち歩くのは日本だけ? アメリカの3倍以上、貨幣需要の背景を米紙分析
第2次安倍内閣が政権の座に就いてから1年以上が経ち、安倍首相が掲げる経済政策「アベノミクス」の効果も徐々に実感を持たれ始めている。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」--これら「三本の矢」は、海外ではどのように注目されているだろうか。
【日銀職員も「ミステリアス」と首をかしげる、日本人のお札好き】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日本にはクレジットカードはもちろん、Suicaや「おサイフケータイ」などの新技術があるにもかかわらず、ここ数年来、紙幣の需要が高まっている、という事実を紹介している。
1990年代中頃までは、貨幣の流通量は、名目GDPに対して10%を下回っていたが、2012年末にはこの数字が19%にまで上昇している。これは先進各国の2倍以上の数値である。一人当たりてみると、アメリカの3倍以上にのぼるという。日本は治安が良いため、現金を持ち歩くのをいとわないのも一端だが、大部分は「タンス預金」であろう、と予想されている。
お金の流れを再び活発にすることは、アベノミクスの目標の1つだが、「タンス預金」はこれを妨げることになる。安倍首相はインフレを生じさせ、消費者が、物価が上昇してしまう前にお金を使うようになることを期待している、と同紙は解説している。
【これまでのところ好評、株高も】
インドのフィナンシャル・エクスプレス紙に掲載されたコラムによると、アベノミクスは、停滞している日本の成長と経済活動を再興しようとする努力によって、金融アナリストや経済学者から好感を得ているという。
再興の要は輸出産業にあるとし、「世界でも主導的な貿易国としての傑出した地位」を日本が取り戻すことに、安倍首相が強い熱意を持っているだろうと語る。日本の貿易収支は、2011年以来、赤字に陥っているが、このような貿易に「強い日本」のイメージは、海外の目にまだ色濃く残っているようだ。
また「第一の矢」日銀の大規模な金融緩和策を契機として、円安が保たれ、ソニーやトヨタのような大企業のみならず、中小企業にも輸出の増加が期待でき、それが投資家の買い注文を誘っている、との分析を披歴している。日経平均株価は、昨年末、6年ぶりの高値を付けた。
アベノミクスの成果について同様の判定を下しているのが、ウェブ誌エコノミー・ウォッチに掲載された記事である。インフレ目標を定めた金融緩和策が、狙いどおり功を奏した、という。また、首相が経済政策について断固として語ったことが、投資家の見通しを明るいものにしたと述べ、2012年11月から2013年の春のあいだに、円はドルに対して20%値下がりし、株価は50%上昇したことを紹介している。
【懸念材料は債務問題と消費税増税の影響】
アベノミクスの懸念材料として、どちらも挙げているのが、膨らみ続ける債務問題である。アベノミクスの「第二の矢」は、公共事業などの緊急経済対策である。フィナンシャル・エクスプレス紙は、日本の債務残高が対GDP比でおよそ250%あることに触れ、このような大がかりな景気刺激策はいつまでも続けられないと指摘する。
また同紙は、今年4月に8%に引き上げられる消費税の影響によって、経済再興が鈍ってしまう懸念もあるとする。対して、エコノミー・ウォッチは、アベノミクス効果により早くも経済成長率が伸びているため、国民にとって増税は受け入れやすいものとなっている、と述べる。そして、2000年のシドニーオリンピック直前に10%の消費税を導入したオーストラリアの例にならい、日本も2020年の東京オリンピックまでに、消費税率を20%まで上げることを提唱する。それにより基礎的財政収支を黒字化し、膨大な債務の返済を開始し、アベノミクスをより一層完全なものにする、というのだ。