“1%じゃダメなんですか?”強気の黒田総裁に海外から冷めたツッコミ
黒田日銀総裁は25日の経団連会合で、消費者インフレ率が来年上半期中に1%を超えるとの見通しを述べ、経済が「デフレ均衡」状態にあるとの国民認識が改まる期待を示した。
円安による輸入コスト増が主原因とされるが、10月のコア消費者物価は前年比0.9%増で、5ヶ月連続のプラスとなっている。27日発表予定の11月のデータは、ロイターのアナリスト調査では1.1%増と期待されており、世界金融危機以来5年ぶりに1%を突破することになる。生鮮食品なども含むヘッドライン物価指数は、9月にすでに1%を超えている。
【他の中央銀行とは違うんです】
日銀は大規模緩和策を開始した2013年4月から、2年間で2%のインフレ目標を掲げている。
黒田総裁は、デフレ均衡状態では企業や家計は値下がりを待って消費や投資を手控えるのに対し、インフレ状態に戻せれば逆に、値上がり前に支出が急がれると説く。総裁は会合で、「(物価への)一般市民の期待を変えることに焦点を当てているという点で、日銀の金融政策は他の中央銀行とは異なっております」「経済、市場、国民感情には全面的な改善が見られます。デフレを終わらせる最良の機会です」などと自信を示している。
また、インフレが発生すれば名目金利が上昇することになり、現在のゼロ金利状態では不可能な、利下げによる追加緩和余地が生じるとも主張する。
【1%じゃだめなんですか?】
しかし各紙は、2年間で2%という数字は実現困難との見方が根強いことも伝える。来年4月の消費税増税による需要冷え込みも懸念されているが、ロイターの指摘では、それはバブル期にさえ見られなかったほどのハイペースだ。HSBCは、コア物価指数が来年6月までに0.7%増に鈍化し、2016年3月までは1%未満に留まると予測している。
元日銀理事で現在は富士通総研の早川英男氏は、「2%のインフレは困難でも、日本は1%前後のインフレを維持できはするかもしれません。それで十分なはずです」とロイターに語っている。一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、1%では国民をデフレ認識から叩き起こすには足りず、投資家は銀行口座や国債にお金をしまいこむと評価する。また、公約通り2%を達成できるかどうかは、日銀の信頼性にかかわるのだという。