仕事はあっても人がいない…海外紙「アベノミクスの公共事業は日本を救えない」
政府は24日、2014年の予算案を発表した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、トンネル崩落事故など国内のインフラ老朽化が進む中、安倍政権が災害に強い国造りを掲げているにも関わらず、公共事業費は1.9%増に留まると報じた。ロイターによると、第3四半期の政府公共事業支出は前四半期比6.5%増もあった。
しかし1年間で株価がほぼ50%アップし、金利も低いにも関わらず、個人消費や設備投資は伸びていない。各紙、公共事業はアベノミクス刺激策の柱ではあるものの、公共事業頼みでは日本は救われないと主張する。そこには経済・労働市場の構造的な問題がある。
【仕事はあっても人がいない、金を撒いても使われない】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、公共事業を増やそうにも高齢化で建設労働者が足りず、現行プロジェクトの進捗もはかばかしくないと指摘している。麻生財務相も同日、自治体が入札業者を集められない状態であることを認め、一時的な外国人労働者の招致も示唆した。同紙は、日本では外国人労働者は風当たりが強いと警告する。
ニューヨーク・タイムズ紙は、公共事業頼み体質である佐賀県の状況を伝えた。公共事業で大金を投下しなければ経済が立ち行かず、かといって投下しても、先行きが不安なために企業が投資や雇用を行わない、というジレンマである。そして投資や雇用で能力拡大をしないがゆえに、大型の公共事業案件があっても受注できない。すなわち、いつ終わるか判らない「公共支出祭り」では事態は改善しないとのことである。
それよりも、同県唐津市では地元企業が主導して、地元農家に化粧品の原料となるハーブなどを栽培させるプロジェクトがあると紹介されている。これまでに1千万円しか投下されていないにも関わらず、当局の期待は大きいようだ。
【安倍政権の言う賃上げなどファンタジー】
雇用・賃金が改善しない現状についてロイターは、正社員から落ちて「一度なったら永遠にそのまま」な、非正規雇用者の窮状を伝えた。昨年の非正規雇用者数は1813万人で全労働力の3分の1以上、1997年から57%増加している。正社員は3340万人で12%減少である。日本の平均年間給与は408万円で同じく13%減少で、非正規雇用では、生活保障が無いにもかかわらず平均168万円にしかならない。取材された非正規雇用者は、安倍政権の唱える賃金上昇を「ファンタジーでしかない」と一蹴した。
政府は解雇規制の自由化を検討している。これは安定成長のための構造改革であるが、「容易な解雇が容易な雇用につながるなら」の話であって、単に正社員が非正規化され犠牲になるだけの結果を同紙は危惧する。政府は、同じ職場での派遣契約を原則3年までとする制限の撤廃法案も作成中だが、これもまた「正社員を待遇の悪い非正規雇用者で置き換えることを許す」と懸念されている。
また専門家は、非正規雇用者は熟練化しにくく、これに依存することは生産性を低下させ、かえって競争力を落とすと警告している。