TPPは改革のための「ガイアツ」か?安倍首相の戦略を海外紙が分析

 日本は、環太平洋パートナーシップ自由貿易(TPP)交渉に、12番目のメンバーとして正式参加した。3年以上にわたるTPP交渉はすでに18ラウンド目であり、7月15日からマレーシア・コタキナバルで行われていた会合がまさに終了するところであった。しかし各国は日程を延長して、24および25日、日本のために経緯を説明する特別セッションを開催した。

 他の参加国はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムで、日本も含めると世界GDPの40%近く、世界貿易の約3分の1を占める、世界最大の自由貿易圏となる。

 なお、日本が初めて冒頭から参加する次回会合は、ブルネイで8月22-30日に開催予定と報じられている。

【安倍首相、ガイアツ利用し国内改革へ】
 これまで日本の首相は、「ガイアツ(改革を求める外国からの圧力)」を利用して国内の改革を進めてきた。しかし安倍首相は、これを大きく超越しているとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘した。

 過去、中国やメキシコが行ったように、大幅な国内改革を推進するため、国際的な経済統合を受け入れたといえる。

 同紙は、特に、日本の農業や保険分野の開放は、皮肉屋たちの予想を大きく上回るものだったとしている。

【ニュージーランドの歓迎】
 テレビジョン・ニュージーランドは、ニュージーランドビジネスフォーラム(NZIBF)が参加を歓迎している旨を伝えた。

 日本はニュージーランド第4の貿易相手国であるが、NZIBFは、日本との経済関係が近年勢いを欠いており、日本は北アジアで唯一、FTAも進行中の交渉も交わしていない相手だったと述べた。

 ホノルル東西センターが実施した研究では、TPPは2025年までにニュージーランド経済に21億ドルをもたらし、そこに日本が加われば約51億ドルに伸びるとされる。NZIBFは「日本とのこの交渉を楽しみにしています」と期待を表明している。

【各国内部での抵抗】
 ただしテレビジョン・ニュージーランドは、米国が望む障壁撤廃や労働者の権利、環境保護、知的財産権の標準決めにおいて、国と企業の繋がりが深いベトナムやマレーシア、あるいは日本の自民党内部でも、抵抗が激しいとも伝えている。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、米国の自動車産業から日本参加への反対が挙がっていることも伝えている。日本による、円の「過小評価や人為操作」への難色が理由とのことである。

 しかし同紙は、日本がそのような操作をした事実はないと否定し、むしろ中国、韓国、ドイツなどの方がそれに当てはまると主張した。

 さらに同紙は、「日本や米国などの大規模かつ比較的閉じた経済に対しては、貿易相手国は、おそらく通貨切り下げによる競争力低下から失う分よりも、それらの国への輸出の増加で得る分のほうが大きい」「いずれにしても、円を弱めるための一方的な努力は、よく監視されたG20合意によってうまく排除されている」とも述べている。

 同紙もまた、「日本がTPP協定に入れば、チリは2025年までに年間GDPの約1%、マレーシア5%、ベトナム10%の利益を得る」「日本自らも年間GDPの2%、米国はほぼ0.5%を得る」との研究を引用して、日本の参加に積極賛成している。

Text by NewSphere 編集部