日銀、景気回復と判断 海外紙の分析は?
日本銀行は11日の金融政策決定会合で、景気の現状判断を「緩やかに回復しつつある」とした。これは、ここ2年で最も楽観的な表現の上方修正といえる。
日銀が、「回復」という言葉を使うにいたったのは2011年1月、震災前以来となる。円安による日本の輸出回復と、消費者支出の回復が裏付けとなっているようだ。
この楽観を反映し、日銀政策委員会は金融政策を現状維持とし、2%のインフレ率目標を据え置いた。
日銀の公式見解においては、景気判断は過去7ヶ月連続で上方修正されており、6月には輸出における回復と消費者支出における回復を伝えていた。
しかし、広範囲での回復の判断を明言したことは、初めてである。
【継続される異次元緩和】
日銀は黒田総裁のもと、3月から大量の国債やその他の資産の買い入れを通じて市中の資金供給量を増やすという前代未聞のアプローチをおこなっている。これは質的・量的緩和政策や異次元緩和等と呼ばれ、金融市場調節の目標をマネタリーベースに変更し、拡大目標を、年間60兆円~70兆円とすることを打ち出している。
日銀の黒田総裁は「量的・質的金融緩和により、実体経済と金融市場に前向きな動きが広がり、景気や物価に対する期待が改善しつつある」と述べ、政策方針の維持する意向を示した。
【経済見通しに関する異なる見解】
楽観的な発表に対して、ウォール・ストリート・ジャーナル紙では、一部のエコノミストが、今秋以降に追加緩和策がある可能性を見込んでいることを報じている。その上で、日銀と民間の物価見通しに大きな開きがあることを指摘し、日銀のコア消費者物価指数上昇の見通しが引き下げられる可能性を伝えた。
またフィナンシャル・タイムズ紙は、内閣府により行われた消費動向調査において、消費者心理をしめす、一般世帯の消費者態度指数が、年初から上昇し続けていたものが、6月は前月を下回ったことを報じている。賃金の上昇がインフレ率に追いつかないと懸念されていることが原因とされる。
ニューヨーク・タイムズ紙では、現在の成長を楽観的にみるエコノミストの声が紹介されている。消費者支出が、消費者心理の改善によるものだけでなく、団塊世代の退職によるものにも支えられているためとしている。退職した団塊世代の人々は、金融資産をためこんでいた状態から、支出や投資をしていくことが期待されている。