OECDの世界経済予測 日本は好評価、問題はユーロ圏
経済協力開発機構(OECD)は29日、34加盟国のGDP予測を発表した。
全体では、今年の成長率は1.2%と予測。11月の1.4%予想、および昨年の実成長1.4%から下方修正した。
米国は今年1.9%、日本は1.6%の成長と予想されているが、0.6%縮小と予想されるユーロ圏が足を引っ張るという。
来年は米国2.8%、日本1.4%、ユーロ圏1.1%の成長と予測されている。また、非加盟国である中国についても、今年7.8%成長と予測した。
「先進国クラブ」とも呼ばれるOECDだが、今や加盟国より非加盟国の方が、GDP成長率ははるかに高くなりそうだと評されている。
【欧米への提言】
ピエール・カルロ・パドアン事務次長は、米国はまだ当面、超緩和政策を続ける事になろうが、問題は刺激プログラムを終了させる時期であると述べた。タイミングを誤れば、債券利回りの急騰など、成長にとって深刻な悪影響のおそれがあるという。さらに、乱暴な一律カットではなく、財政再建を微調整すべきと指摘。「米国では、緊縮財政の編成は、控えめに言って非常にまずく設計されています」と述べた。
ユーロ圏については、各国国民を説得して改革を続行し、銀行連合など欧州連合レベルの政策を強化する必要があると述べた。銀行連合の構築の仕方などで加盟国間が対立することには、危惧を表明している。
また欧州中央銀行に対しては、米国や日本のような量的緩和や、マイナス金利の採用など、もっと思い切った行動に踏み切るべきだとも主張している。
【アベノミクスが中国経済を損なっている証拠なし】
一方フィナンシャル・タイムズ紙は、国際通貨基金(IMF)のデビッド・リプトン筆頭副専務理事が同日、日本の金融緩和プログラムが他の国で資本フローや過剰流動性をもたらしている証拠は今のところ見当たらない、と発言したことを報じた。
背景として、リプトン氏は中国を訪問中であり、中国は日本の緩和策に対して懸念を表明していた。
しかしリプトン氏は、日本の緩和策による円安により、新興国の相対的な競争力に影響は出ているものの、中国にそれは当てはまらないと指摘した。
中国の研究者からは、「アベノミクスは夏の参院選までの短期的なもの」という声もあると報じられている。一方、このまま円安が続くようなら、中国は人民元を切り下げると示唆する発言も取り上げられている。
なおIMFは同日、中国の2013年成長見通しを8%から7.75%に引き下げている。OECDは中国の成長を、高い公共・社会インフラ支出に支えられ「地味ながらも堅牢」と評しているが、IMFは「社会総融資の急増は、投資の質とその返済能力への影響に関する懸念を発生させます」と危惧を表明した。