黒田総裁、「2%」目標に柔軟姿勢を強調する理由とは
日銀の黒田総裁は11日、海外メディアのインタビューに答えた。
海外紙が最も注目したのは、黒田総裁が、「2年間で2%のインフレ目標」は、「柔軟なもの」という見解を示した点だ。
黒田総裁は、インフレ目標を、「機械的に固執するという意味ではない」と強調。目標は重要であるが、他国の中央銀行のように、経済指数なども考慮して適切な政策をとり、達成すると述べている。
さらに同氏は「賃金と利益が株式市場とともに上昇している状態で、経済が十分回復するなら、金融緩和策を見直す考えもある」とも示唆した。
【発言の背景】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、2%のインフレ目標を2年間で達成することについて、不可能ではないが困難と見る向きもあると報じている。一部には、新たな緩和策に打って出るのではないかとの懸念の声も上がっているという。こうした声は、資産バブルへの危惧に根ざしている。
黒田総裁が「柔軟」姿勢を強調する理由の一つが、こうした懸念をやわらげることにあるといえる。
なお、安倍首相の経済アドバイザーである、米エール大学名誉教授の浜田氏も、「必ずしも2%にこだわる必要はなく、経済が回復さえすれば、1%で十分である」と述べていることを、ロイター通信は報じた。
【黒田総裁の金融政策、ルーツは1930年代にあり?】
ブルームバーグは、黒田総裁の大胆な金融政策は、1930年代前半の高橋是清大蔵大臣の施策と類似する点がある、と指摘した。
高橋氏は、日銀が国債を引き受ける「財政ファイナンス」の手法をとり、インフレを誘導し、未曾有の「世界大恐慌」から抜け出した。FRBのバーナンキ議長をはじめ、この功績は高く評価されている。
ただ、「財政ファイナンス」に対しては、批判の声も少なくない。特にインフレのコントロールが難しく、さじ加減ひとつ間違えると、悪いインフレになりかねない。
ブルームバーグは、両氏の政策の類似点を分析したうえで、現代の課題を指摘している。まず、1930年代のように、大胆な金融政策と連動する形で積極財政をとることが必要な点。次に、すでに一部から見られる、「円安誘導」、「中央銀行の独立性」に対する他国からの批判への処置が必要な点だ。