IMFトップの日本経済評価は、「落第組」?
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、10日にはニューヨーク経済クラブで、11日には中国のボアオ・アジアフォーラムで、それぞれ世界経済情勢について語った。
中国などから「意図的な円安誘導」と非難もあった、日銀の大規模緩和策について、ラガルド氏は歓迎の姿勢を示した。ただし、日本経済そのものについては、「問題のある」グループに分類している。
ラガルド氏は、世界経済の成長は今年もなお鈍く、各中央銀行は金融緩和策を維持する必要がありそうだと語った。
IMFは、2012年の世界経済成長率を3.2%、2013年の予測を3.5%(1月に3.6%から下方修正)、2014年に4.1%としている。
ラガルド氏は、急成長中の新興国、米国など経済復興中の国、ユーロ圏や日本など問題のある国、の「3段変速」に分かれた状態だと喩えた。
ラガルド氏の発言のポイントは下記の通り。
○新興国は、先進国の低金利に負けて、一気に資金流入が干上がるおそれがある。銀行監督強化、急成長地域への信用規制、資本要件の賦課、外国為替エクスポージャー(リスク対象資産)の監視、といった対策が必要である。
○米国は、「財政の崖」は回避できたが、GDP108%の債務が課題である。短期的には赤字削減を慌て過ぎて成長を傷つけており、失業率の高い状態においては危険である。また、長期的には悠長過ぎである。債務削減について、信頼できる中期計画をたてることが、オバマ政権の生命線である。
○ユーロ圏は政策が空回りしている。金利を下げても、必要とする人の手に届く値段の信用が生み出せていない。最優先は銀行システムの浄化であり、資本注入、リストラ、必要なら銀行閉鎖をも断行する必要がある。キプロスの銀行救済例は特殊なので、将来のお手本にはならない。ヨーロッパは緊縮政策を続けるべきだが、急ぎ過ぎ・厳し過ぎるべきではない。
○日本の、GDP245%の公的債務は、いよいよ持続不可能に見える。それに取り組む明確な計画は喫緊の優先事項。だが、デフレ脱却の必要もあり、成長を急発進させるため、金融政策にもっと多くを依存する必要がある。日銀の、非常措置を含む金融政策は、先進国経済とグローバル成長の下支えに貢献した。だが量的緩和で達成できることには限界があり、バランスシートの修復と包括的な構造改革が必要である。また、金融面での不均衡や資産価格高騰のような副作用を回避するため、日銀は、タイミングとペースを考えて金融支援を引き揚げる必要がある。
ラガルド氏は、あまりにも多くの国において、金融市場の改善が実体経済の改善につながっていないと評している。