日銀短観「景況感改善」 それでも海外紙が慎重な理由とは
日銀は1日、3月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。前回12月より全般的に景況感は改善され、業績見通しもおおむね堅調だ。ただ、エコノミストらの予想をやや下回ったことも影響してか、日経平均指数はマイナススタートした。
各紙は、黒田新日銀総裁の金融緩和策や世界の景気動向から、日本経済の行方を分析している。
各紙は総じて、景況感の改善は、安倍首相の景気刺激策(アベノミクス)による、円安と株価急騰による期待感が大きく影響しているとみている。エコノミストの間では、輸出の重要性が指摘されている。円安下での輸出業の売上改善(年度会計におけるドル円数値の上昇)や、最大貿易相手国である米中の景気回復などが背景にある。
ただし、景気回復には時間がかかるとみているようだ。
フィナンシャル・タイムズ紙は、円安による利益見通し改善に伴い、大手製造業の景況感は好感されているものの、業種全体の数値はほぼ変わらないことから、日本の経営者の悲観論は根強いと論じている。背景には、リーマンショックと東日本大震災・津波の影響による、長く続くデフレと成長率の停滞があるとしている。大企業製造業の設備投資計画が前年度見込み比2%減だったことにも、企業の慎重姿勢があらわれている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この背景には、実体経済への政府の政策の影響力に対する不安があるのでは、とみている。
ブルームバーグも全体的に慎重な報道で、景気回復には時間がかかり、量的緩和を中心とした更なるサポートが必要と論じた。黒田日銀総裁が、短観は、4月3日~4日の政策会議において金融緩和を拡大する必要性を押し上げたとみていることも取り上げた。
同紙はまた、輸出額に対して輸入額の増加が大きいことにもふれ、円安下での輸入業者の利益減(製鉄業や造船業者の見通しの暗さ)や、原発停止による燃料輸入額増加が、貿易収支の悪化につながっていることを報じている。