黒田氏、日銀総裁へ 海外紙はどう報じたか?

 黒田東彦・アジア開発銀行総裁が、第31代日銀総裁に就任する。衆参両院の合意が得られたため、20日付けで任命されることになった。また副総裁には、岩田規久男・学習院大教授と、中曽宏・日銀理事が就任する
 海外各紙は、政府と日銀がデフレ脱却に向け足並みを揃える様子や、前途多難とされる道のりを報じている。

【黒田氏の紹介】
 黒田氏は、これまで日銀の金融政策における判断ミスを厳しく批判してきた人物だとニューヨーク・タイムズ紙は紹介している。同氏が、2005年に発刊した著書「財政金融政策の成功と失敗」の中で、経済やデフレに対する日銀の理解力のなさを指摘していたことなどを取り上げた。
 フィナンシャル・タイムズ紙は黒田氏を、初めて「前任者の主張を完全に否定」した総裁と評し、その事実をもとに、同氏が達成しなければならないのは革命そのものだと報じている。実際、黒田氏は、安倍首相から突きつけられた2%のインフレ目標に対して、金融政策だけで2年以内に達成可能だと強気の考えを示し、就任後はスピード重視で「質的にも量的にも」大胆な金融緩和を実施する意向だ。

 日銀に根付く常識を覆す方針には反発も予測されているが、副総裁となる中曽氏は「根回し上手」と言われており、その手腕が期待されているようだ。既に同氏は、やんわりと白川総裁の政策と距離を置きつつ、黒田氏を支持する姿勢を示しているという。

【日銀内の反対意見をどう抑えるかがカギ】
 「日銀に革命を起こすドリームチーム」だとニューヨーク・タイムズ紙は報じているものの、前途は多難だと言われている。日銀の政策委員の中には、大胆な金融政策に反対するものも少なくはない。日本経済の悪化は日銀だけの責任ではなく、高齢化や人口減少、アジア諸国の低コスト産業による影響なども大きいと訴える声も多いという。
 黒田氏は、経済悪化の原因はどうであれ、その状況に立ち向かうことが日銀の役目だと訴えているという。しかし、巨大組織である日銀の根本的概念を変えながらの舵取りは容易ではないはずだと報じられている。

 日銀政策委員会の9人のメンバーのうち、石田浩二委員など6人が白川派だとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。エコノミストはその様子をオセロゲームに例え、「黒」田氏は「白」川派の審議委員を「反転」させていかなければならないとしている。

【マーケットの反応は】
 一方、マーケットの反応は薄いとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。日経平均は4年半ぶりに12500円を超え、ドルは96円前半まで上昇しているものの、盛り上がりは乏しいようだ。日銀人事の決定は既に相場に折り込み済みで、さらなる材料視となるまでに至っていないという。意見の割れているアベノミクスや黒田氏のお手並み拝見といったスタンスでしばらくは慎重な反応となりそうだ。

Text by NewSphere 編集部