日本、メタンハイドレート産出成功 海外紙が指摘する課題とは?
12日、経済産業省資源エネルギー庁は、愛知県沖の東部南海トラフ海域の地層に眠るメタンハイドレートから、メタンガスを分離して取り出すことに成功したと発表した。
メタンハイドレートとは、天然ガスの主成分であるメタンが氷状になったもの。日本は過去、カナダとの共同研究で永久凍土からのガス化と採取に成功した経験があるが、海底からの採取成功は世界初。世界中のメタンハイドレートのほとんどが眠る「海底」からの採掘成功の意味は大きいとされる。
日本は、メタンハイドレート開発に何億ドルも投資してきた。もともと資源に乏しく、原子力に大きく依存することで化石燃料の輸入増に歯止めをかけてきた日本だが、2011年の震災と福島の原発事故によってそのシナリオは大きな変更を余儀なくされている。17原発50基中2基以外のほとんどが停止している今、日本の天然ガス輸入量は急増しており、米国のシェールガスに比べて5倍というそのコストが貿易上の重い足かせとなり、最近の円安による旨みも吸収してしまう状態だといわれる。
今回の試験海域のメタンハイドレート埋蔵量は、日本の天然ガス輸入量の11年分に相当するという。日本の海域全体での埋蔵量は、7兆立方メートル余りとされ、100年分の天然ガスをまかなえる計算になる。日本にとって、開発を急ぐ意義は計り知れない模様だ。政府は2018年までに採掘・抽出技術の確立を目指している。
今回の成功を受け、開発を主導する独立行政法人石油天然ガス金属鉱物資源機構(JOGMEC)のスポークスマンは、「日本はついに、自前のエネルギー資源を獲得した」と発表したとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
ただし、同スポークスマンの発言には、時期尚早の感が否めないという。なぜなら、実用化までには、二つの大きな課題を克服する必要があるためだと各紙は指摘する。
第一の課題は生産コスト。現段階では、メタンハイドレートのコストは「高い輸入天然ガス」のさらに3倍以上にのぼるという。このコストをいかに低減するかが喫緊の課題とされる。これについて茂木経済産業大臣は、10年前には実用化が危ぶまれていたシェールガスを引き合いに出し、解決は可能だという見解を示したとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
第二の課題は環境問題。フィナンシャル・タイムズ紙などは揃って、海底のメタンハイドレートの採掘とガスの抽出が環境に及ぼす影響を「未知数」だと報じた。メタンガスは、燃焼時の二酸化炭素排出量が石油の約半分で、環境負荷が極めて少ない「クリーン」なエネルギーである反面、それ自体が「温室効果ガス」であり、採掘中の不慮の事態によって大気中に放出されれば、大きな影響が避けられないという。
さらに、海底地すべりが起きる危険性も指摘されている。