海外紙、白川総裁を「大胆」と評価 指摘する意外な弱点とは?
日銀は7日、白川方明総裁の任期中最後となる金融政策決定会合を開いた。白井委員から「無制限資産購入の前倒し」の議案が提案されたものの、否決。特に金融政策の変更はなかった。
次期総裁には黒田東彦氏、副総裁には岩田規久男・中曽宏両氏の就任が確実視されており、新体制での最初の会合は4月3~4日となる。
一般に、白川総裁は財政規律重視派でデフレ脱却の戦いに消極的、一方黒田氏は積極緩和派であり就任後は次々緩和策を打ち出すと目されるが、海外紙は違った見方も伝えている。
【表情がよくなかった?】
ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌は白川総裁の任期を総括し、「日銀の資産(バランスシート)を50%拡大、インフレ目標を導入し、ショックから国の銀行システムを守った」と評した。同誌によると「少なくとも1982年以来、最も積極的な総裁」であり、「日銀の130年の歴史の中で最も大胆だったかもしれない」との意見も紹介している。
しかし、同じ期間にバランスシートを250%拡大した米連邦準備委員会や、倍増させた欧州中央銀に比べると「遅れをとり」、相対的に円高を招いたと述べた。そして「受動的に攻撃的」な政策がデフレ傾向を固定化させ、就任時よりも経済を縮小させてしまったという。
元日銀政策委員の水野温氏は、総裁が「ショックに対し金融システムを確保する上で素晴らしい仕事をしました」としながらも、「しかし、彼はコミュニケーション面で緩和のインパクトを低減させてしまいました。毎度、刺激を加えるときいかにも自信たっぷりだったバーナンキ連邦準備委員長に対し、弱気な表情で副作用の説明をやり過ぎたのです」と評した。
【日銀政策委の新勢力図】
フィナンシャル・タイムズ紙やウォール・ストリート・ジャーナル紙は、会合において、白井さゆり委員と宮尾龍蔵委員が、積極緩和策を提案したことを報じた。白井委員は無制限資産購入を来年まで待たずにすぐ始めるべきだと主張。宮尾委員は「2%インフレ目標が視界に入るまでの」低金利を訴えた。白井・宮尾両氏の提案はともに8対1で否決されている。両氏が緩和派となれば、黒田新体制は、政策委員9人のうち緩和派が5・緊縮派が4の構図となる。ただ、両氏が互いの議案に反対していることもあり、黒田氏らの緩和主導にあたっても困難を予想する声があるという。
折しも発表された今年度第3四半期のGDPは前期比0.04%(年率0.2%)増で、3期連続縮小の予想を覆し、成長に復帰した。黒田氏への期待もあってか、株価も4年ぶりの高水準に上昇している。