黒田氏、日銀総裁へ・・・デフレ脱却か?危険なバブル再来か?分かれる日本紙の評価
次期日銀総裁候補の黒田東彦氏は4日、衆院議院運営委の所信聴取に臨んだ。日本各紙(朝日・読売・産経)は、その内容と影響について評価している。
各紙は共通して、デフレ脱却に向けた黒田氏の積極姿勢を報道。特に以下の2点に注目している。
1つ目は、物価を2%上げる目標を「2年」で達成したい考えを示したことだ。1月に2%の物価目標を導入した際は、日銀は達成期限を明示せず、「できるだけ早期」とするにとどめていた。しかし黒田氏は、“2%の早期実現は可能”、“(達成時期は)グローバル・スタンダードでは2年程度で、2年は一つの適切なメド”と述べた。朝日新聞によると、この発言が日銀や金融市場の関係者を最も驚かせたという。
2つ目は、デフレ脱却のために、「量的にも質的にもさらなる緩和策が必要」と踏み込んだ点だ。量については、市場から買い入れる国債の対象を、現状より満期までの期間が長いものに広げる考えを示した。さらに、「銀行券ルール」(国債保有額を銀行券=お札の発行残高以下に抑える)の見直しにも言及した。質については、日銀が買い入れる金融資産を国債以外に広げ、多様化する考えを示した。
黒田氏の発言の影響もあり、市場では株高・債券高・円安が進んだ。
ただ、こうした黒田氏の発言に対する各紙の報道の論調は、微妙に異なっている。
まず朝日新聞は、バブルを懸念する姿勢で報じている。金融緩和の強化により、日銀の資産が値下がりし、信用に傷がつくことで、国債が売られ、長期金利が急上昇する(価値は下がる)というリスクを指摘している。2年という期限の明示についても、現状の物価上昇率では2%の達成は難しいこともあり、達成できないまま期限が近づけば、無理な緩和でバブルを発生させる恐れがあると指摘した。市場の動きに関しても、不動産などの株高が目立つと指摘し、「バブルの兆し」という証券関係者の声を取り上げた。
一方読売新聞は、基本的に評価する姿勢である。円安・株高は、黒田氏の“手腕に対する期待”だと報じている。内容についても、これまでの日銀の金融政策を否定し、緩和に積極的な姿勢を示したと評価。「市場の期待にほぼ100%応えた」という専門家の声も取り上げた。
ただし、国債信認低下の可能性や、日銀の審議委員6名との政策すり合わせの行方が不透明な点などのリスクがあることにも言及している。
産経新聞も基本的に評価する姿勢といえる。黒田氏の発言は、安倍首相の意向に100%沿ったもので、市場の安心感は高まったと報じた。加えて、具体的な緩和策に対する質問について現実的な回答を行なっていることから、“リスクを嫌う日銀の政策委員に配慮する理性的なリーダー”の一面も見せた、と評価している。
なお政府は15日までに人事案採決を目指すが、参院第一党の民主党の出方は定まっていないようだ。ただ、民主党の反対理由は尽きており、無理に反対すれば市場を敵に回す懸念がある、と朝日新聞は指摘している。