【地域別】世界の王室一覧|27カ国の王室の特徴、皇室との違いを解説
世界には27カ所の王室が存在し、王室の権限や国王の姿、政治への関わりは、国や地域によって大きく異なる。各国の王室はどのような暮らしを送っているのか、なぜ王室は裕福な暮らしができるのかなどについて、疑問に思うのではないだろうか。
今回は、世界27か国の王室・国王について、また各国の王室の実態について詳しく解説する。
目次
「王室」とは何か
「王室」とは、国を統治する国王が所属する一族のことを指す。かつて封建制度が敷かれていた時代には国ごとの領主がそれぞれ政治的な統治を行っていたが、中世末期以降絶対王政が浸透すると王室による政治的支配が全国に及んだ。
世襲で受け継がれる日本の「皇室」も「王室」として区分され、日本の天皇家は皇室にあたる存在である。
王室の仕組みや成り立ち
王室の仕組みや成り立ちは国ごとにさまざまであるが、多くの国では中世に起こった国同士の覇権争いを制した君主が王として即位する流れで、王家が成立してきた。
例としてイギリス王室では、1066年に勃発したヘルディングズの戦いで勝利を収めたウィリアム1世が王に即位し、イギリス王室を確立した。
また、オランダ王室では1568年から約80年にわたり続いた対スペイン独立戦争を制し「都市の征服者」との異名を授かったウィレム=フレデリックが総督に就任。その後、ウィレム1世として王位に即位した。
王室と皇室の違い
日本の天皇制における「皇室」は世界各国の「王室」と混同されやすい言葉だが、皇室と王室では狭義において位置づけが異なる。
まず日本の天皇家をはじめとする皇室は、天皇の血族を指す言葉であり、世襲制度でのみ天皇の座が受け継がれる。
これは皇室における天皇が、日本書紀の中で最も尊い神様として描かれた天照大神の流れを受け継ぐ神に代わる存在として位置づけられることが理由だ。
一方で世界における王室は、その時代で実権を握る王とその一族によって受け継がれる。つまり、時代ごとに王室の家系は移り変わる性質をもつ。
【世界の王室】ヨーロッパにある王室制度の国
ヨーロッパでは、かつて絶対王権によって国王権力に依存した政治体制が敷かれていた。とくに16世紀から18世紀にかけては絶対王政が用いられ、さらにその後登場した王権神授説を用いて王権の強化が行われた。
しかし、時代は移り変わり市民革命によって絶対王政が崩壊した頃、市民層の権利復興のために立憲君主制が登場した。
そして現在では、立憲君主制に基づく政治体制が主流となっている。典型的な例であるイギリスでは、名誉革命を機転として「君臨すれども統治せず」という現在の立憲君主制の前提が生み出された。
ヨーロッパにある王室制度の国一覧
ヨーロッパにある王室制度の国と国王は、以下のとおりである。
国名 | 国王 |
イギリス | チャールズ3世 |
ベルギー | フィリップ・ド・ベルジック |
スペイン | フェリペ6世 |
オランダ | ウィレム=アレクサンダー |
デンマーク | マルグレーテ2世 |
スウェーデン | カール16世グスタフ |
ノルウェー | ハーラル5世 |
ルクセンブルク大公国 | アンリ |
リヒテンシュタイン | アロイス・フォン・リヒテンシュタイン |
モナコ | アルベール2世 |
世界で最も注目度が高いイギリス王室
国民に親しまれる王室のかたちを目指すイギリス王室は、国内のみならず世界的にも大きな注目を浴びる存在である。
しかし、最近話題になっているのが、国王チャールズ3世の次男・ヘンリー王子による一連の暴露劇だ。
2023年1月10日に発売されたヘンリー王子による暴露本『Spare』では、兄・ウィリアム王子との確執や故・ダイアナ妃をめぐるメディアとの対立など、王室の裏側が赤裸々に綴られた。2020年3月に公務から一切引退することを発表しアメリカへ移住したのち、ロイヤルファミリーに対する暴露を始めたヘンリー王子の勢いは、世論に衝撃を与えた。
世界の王室のなかでも注目度の高いイギリス王室だが、今後もその行く末に注目が集まるばかりである。
【世界の王室】アジア・太平洋地域にある王室制度の国
世界で最も個人資産が多い国々のなかで1位から4位を占めるのはアジア・太平洋地域の王室であることからも、アジア・太平洋地域の王室の裕福さがうかがえる。とくに個人資産ランキング1位を獲得したタイ王室・ラーマ10世の純資産は、300億ドルにものぼる。
しかし、タイ王室は莫大な資産を保有する一方で、タイ国内では激しい経済格差の現状が問題視されている。市民によるデモ活動が起こるなど、王室に対して激しい批判が起こっている。
アジア・太平洋地域にある王室制度の国一覧
アジア・太平洋にある王室制度の国と国王は、以下のとおりである。
国名 | 国王 |
日本 | 今上天皇 徳仁 |
カンボジア | ノロドム・シハモニ |
ブータン | ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク |
タイ | ラーマ10世 |
マレーシア | アブドゥラ・スルタン・アフマド・シャー |
ブルネイ | ハジ・ハサナル・ボルキア・ムイザディン・ワッダラー |
トンガ | トゥポウ6世 |
最も歴史が長い日本の皇室
世界の王室のなかで最も歴史が長いのが、日本の皇室である。日本の皇室の始まりは紀元前660年の初代神武天皇即位だ。
かつて世界最古の皇室はエチオピア皇帝家とされていたが、1974年に同皇帝家が消滅してからは、日本の皇室が最も長い歴史をもつ王室である。
先述したとおり、世襲で受け継がれる日本の皇室は、世界で唯一万世一系の皇族だ。
【世界の王室】アフリカにある王室制度の国
かつてヨーロッパの国々による植民地支配を受けた歴史をもつアフリカでは、現在政治体制に立憲君主制を用いている国々が多く存在する。アフリカの内陸国・レソトはアフリカでも数少ない立憲君主制国家であり、国王は国民の象徴として政治の実権を握らない体制を取っている。
しかし一方で、立憲君主制が形骸化し国王が絶対的権力を握っているケースも散見される。イギリス連邦加盟国・エスティワニでは国王が行政権・立法権を握り、現存の議会に関わらず絶大な権力を握っている。
アフリカにある王室制度の国一覧
アフリカにある王室制度の国と国王は、以下のとおりである。
国名 | 国王 |
モロッコ | ムハンマド6世 |
エスティワニ(スワジランド) | ムスワティ3世 |
レソト | レツィエ3世 |
リベラルな政治改革を目指すモロッコ王室
新たな政治のかたちとして注目を集めているのが、リベラルな政治改革実現を目指し尽力しているモロッコ王室だ。
2010年12月17日に勃発した「アラブの春」を機に、国王であるムハンマド6世は王権の縮小と自由主義的政治体制の確立を目指し、憲法改正や複数政党制の承認を実施した。大規模デモ勃発からわずか3週間後に憲法改正へと踏み切ったムハンマド6世の英断は、その後の大きな政治改革の皮切りとなったのである。
憲法改正後には、これまで政権獲得を阻まれてきたイスラーム主義政党によるイスラーム主義政党政権が誕生した。
【世界の王室】中東地域にある王室制度の国
中東地域では宗教の対立による紛争が絶えず起こっており、その時代の支配者が国王として国を治める流れが一般化している。そのため、日本の皇室のように「国民の象徴」たる国王の姿と中東地域の王室のイメージは大きく異なる。
とくにサウジアラビアやアラブ首長国連邦の国王は多額の資産を保有するが、その資産は国民に平等に分配されるものではない。そのため、自国民と移民・外国人との間に大きな所得格差が存在する。
一方、一部の国では、国王が国家の資源を国民に分配する「レンティア国家」の方向性を見直し、石油産業のみにとどまらず他の産業にも力を入れようと、持続可能な経済活動を目指す動きも見られる。
中東地域にある王室制度の国一覧
中東地域にある王室制度の国と国王は、以下のとおりである。
国名 | 国王 |
サウジアラビア | サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ |
アラブ首長国連邦(UAE) | ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン |
ヨルダン | アブドゥッラー2世・ビン・アル=フセイン |
バーレーン | ハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ |
オマーン | ハイサム・ビン・ターリク・アール=サイード |
カタール | タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー |
クウェート | ナワーフ・アル=アフマド・アル=ジャービル・アッ=サバーハ |
財政危機に直面するサウジアラビア王室
豪勢な王家の姿が印象的なサウジアラビア王室だが、現在は財政危機に直面している。
サウジアラビア王室はかつて石油産業で富を成し、永続的な経済高揚が約束されたと思われていた。しかし原油価格が低迷する現在では、逼迫した経済状況が課題である。
こうした現状に対し、サウジアラビアでは国家予算を国王1人で決める仕組みが敷かれている。そのため、財政危機に陥りながらも王室の支出は以前と変わらぬままであり、国内格差は拡大の一途を辿っている。
一部では民営化の動きも見られるが、利己的な考えをもつ一部の王族は、頑なに民営化反対を掲げている現状がある。
国によって異なる王室の特色に注目
国や地域によって国民が国王に対して抱くイメージ、王室の権限の範囲、政治と王室の関係性は多種多様である。また、時代の変化とともにこれまでの王室のあり方が揺るがされている国も存在する。
国ごとに異なる王室の特色に注目しながら、これからの世界の王室の動きに目が離せない。
あなたにおすすめの記事
◆「英王室はヘンリー王子の暴露を乗り越え、変化することができるか 回顧録『スペア』発売」