2023年サッカー女子W杯 スケジュールや注目選手、放送日程などを解説 

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2023年7月20日、いよいよ第9回女子サッカーW杯が始まります。今回の大会は、オーストラリアとニュージーランドの共同開催です。世界各国の熱い戦いと、今年再び世界の頂点を目指すなでしこジャパンの活躍が期待されます。この記事では、第9回女子サッカーW杯のスケジュールや注目選手、放送日程など、押さえておきたい基本的なポイントをわかりやすくまとめてご紹介します。

なでしこジャパンの愛称で親しまれる女子サッカー日本代表ですが、今回はエースナンバーである10番を背負ってきた岩渕真奈選手が落選するなど、驚きの展開もありました。今大会でキープレイヤーとなるであろう注目選手としては、海外組を含めて、長谷川唯選手・猶本光選手・清水梨紗選手・長野風花選手・熊谷紗希選手を紹介したいと思います。

なでしこジャパンの中心メンバーを紹介

注目選手 一人目:長谷川唯(海外組)

長谷川唯選手は、宮城県仙台市出身、1997年1月29日生まれの26歳です。ポジションはミッドフィルダーで、近年はチームの要として攻守を担うボランチでもプレイしています。なでしこジャパンの司令塔として中盤で素早くチームの攻撃を組み立て、相手チームの裏をかいたゲームメイクは見る人を惹きつけます。卓越したドリブル・パスの技術を持ち、縦横無尽にコート内を駆け回る豊富な運動量を誇る、世界に通用する確かな実力のある選手です。

長谷川選手は2021年から海外へ移籍しており、イタリアのACミラン、イングランドのウェストハム・ユナイテッドでプレイしてきました。2022年からはイングランドFA女子スーパーリーグ(FAWSL)の強豪マンチェスター・シティWFCで活躍しています。
2014年に開催されたU-17女子サッカーW杯では優勝の実績があり、シルバーボール賞を受賞しています。また、2016年に開催されたU-20女子サッカーW杯でも3位に入賞しました。これまでの日本代表としての出場試合数は66、得点数は16となっています。

注目の日本代表選手 二人目:清水梨紗(海外組)

清水梨紗選手は、兵庫県神戸市出身、1996年6月15日生まれの27歳です。サッカー選手としては華奢な体格で、一見おっとりした雰囲気にも見えますが、意外にもアグレッシブなプレイスタイルを持ち味とする選手です。ポジションはディフェンダーで、サイドバックから積極的に前に出て攻撃に加わるプレイを得意としています。卓越したスタミナを活かした粘り強い守備に定評があり、諦めることなく走り続けて攻撃の起点を生み出すのです。

清水選手は長く日テレ・メニーナ、日テレ・東京ヴェルディベレーザで活躍してきた選手ですが、2022年から海外移籍してイングランドFA女子スーパーリーグ(FAWSL)のウェストハム・ユナイテッドWFCに所属しています。強豪揃いのイングランドスーパーリーグで得た経験が、清水選手を一層強くしていることでしょう。これまでの日本代表としての出場試合数は62、そのうち56試合が先発出場となっています。前回(2019年)の女子サッカーW杯では4試合すべてに出場しており、今回のW杯でも活躍が期待される選手です。

注目の日本代表選手 四人目:長野風花(海外組)

長野風花選手は、東京都江戸川区出身、1999年3月9日生まれの24歳です。ポジションはミッドフィルダーで、イングランドスーパーリーグのリヴァプールFCウィメンに所属しています。卓越したボールコントロールの技術を持ち、一本のパスで試合を切り開く状況判断のセンスにも優れています。視野が広く、ゲームの流れを読んで勝利に繋げる力があります。

長野選手は10代の頃から次世代のエース候補として注目されてきたキープレイヤーで、なでしこジャパンの主軸としての活躍が大きく期待されます。年齢制限のない女子サッカーW杯への出場は今回が初めてとなりますが、これまで2014年・2016年のU-17女子サッカーW杯、2018年のU-20女子サッカーW杯に出場しています。2014年・2018年には優勝、2016年には準優勝を経験しており、その輝かしい活躍で2016年にはゴールデンボール賞とアジア年間最優秀ユース選手賞を受賞しています。今回のW杯で再び世界の頂点を目指すなでしこジャパンにおいて、間違いなく大きな注目を集めている選手です。

注目の日本代表選手 五人目:熊谷紗希(海外組)

熊谷紗希選手は、北海道札幌市出身、1990年10月17日生まれの32歳です。ポジションはディフェンダーで、女子サッカーW杯への出場は2011年から4大会連続の4回目。なでしこジャパンが想定外の優勝で日本中を熱狂させた、2011年大会の優勝メンバーです。当時20歳だった熊谷選手が決勝のPK戦で放ったシュートにより、日本の優勝が決まりました。2017年からは日本代表のキャプテンを務めており、今のなでしこジャパンに欠かせない選手となっています。

これまでの日本代表としての出場試合数は135、そのうち132試合が先発出場という圧巻の経験値が強みです。
熊谷選手は10年以上ヨーロッパの強豪クラブで活躍を続けており、前シーズンまでドイツ1部リーグであるブンデスリーガのバイエルン・ミュンヘンに所属していました。2023年6月から、2年契約でイタリア・セリエAのASローマに移籍しています。今大会でなでしこジャパンを再び世界の頂点へと連れて行ってくれるのか、活躍が期待されます。

注目の日本代表選手 三人目:猶本光(国内組)

猶本光選手は、福岡県小郡市出身、1994年3月3日生まれの29歳です。ポジションはミッドフィルダーで、三菱重工浦和レッズレディースに所属しています。2010年に開催されたU-17女子サッカーW杯、2012年に開催されたU-20女子サッカーW杯にも出場しており、10代の頃からトッププレイヤーの1人として国内外で活躍を重ね、技術に磨きをかけてきました。攻守、どんな場面にもきっちり対応していく判断力と技術を持った、オールラウンダーとも呼べる丁寧なプレイができる選手です。

猶本選手は、大学院卒業後に海外移籍して、2018年から2シーズンの間、ドイツ1部リーグであるブンデスリーガのSCフライブルクでプレイしていました。2020年から浦和レッズレディースに復帰しています。2014年の女子サッカーW杯で初めてなでしこジャパンに招集された猶本選手ですが、その後9年間はW杯への出場はありませんでした。今回、29歳にして初めてW杯代表選手に選出された猶本選手の活躍に注目しましょう。

女子サッカーW杯2023大会の概要

参加国とその国数の変遷について

今回(2023年)の女子サッカーW杯には、史上最多となる32カ国が参加します。予選を突破した32の参加国は、次の通りです。

アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、コロンビア、コスタリカ、デンマーク、イングランド、フランス、ドイツ、ハイチ、イタリア、ジャマイカ、日本、韓国、モロッコ、オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、パナマ、フィリピン、ポルトガル、アイルランド、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、アメリカ、ベトナム、ザンビア(※1)

女子サッカーW杯は、1991年に初めて開催されました。それ以降4年に1度開催されており、だんだん規模が大きくなって参加国が増えています。第1回(1991年)の参加国は12カ国でしたが、第3回(1999年)からは16カ国、第7回(2015年)からは24カ国が出場しています。そして今回、第9回(2023年)の大会では史上最多の32カ国が出場することとなりました。女子サッカーの世界的な普及と盛り上がりが感じられます。

なお、男子サッカーW杯は1930年に初めて開催されました。こちらも第1回(1930年)の参加国は13カ国でしたが、だんだん規模が大きくなって、第16回(1998年)から第22回(2022年)までの大会では32カ国が出場しています。次回大会から、男子サッカーW杯は出場枠が48カ国に拡大されることが決まっています。

優勝賞金や放映権料など、サッカーにおける男女格差の諸問題について

近年、様々なスポーツの大会で、賞金などにおける男女格差が問題視されるようになりました。サッカーW杯においても、現状、男子と女子との待遇には大きな格差があると言わざるを得ません。FIFA(国際サッカー連盟)は、こういった諸問題に対策を講じ、積極的に男女格差の是正に取り組む姿勢を打ち出しています。

例えば、賞金について。今回(2023年)の女子サッカーW杯では賞金額が大幅に引き上げられ、1億1000万ドル(約150億円)となりました。前回(2019年)大会での賞金は3000万ドルだったため、今大会では3倍以上に増額されています。しかしながら、昨年(2022年)の男子サッカーW杯での賞金額は4億4000万ドル(約600億円)であり、未だ男女格差がなくなったとは言えません。FIFAは、次回(2027年)の女子サッカーW杯において賞金額を男子と同額に設定することを目標として掲げています。

また、実はテレビ放映においても、男女格差の面で大きな問題があります。日本を含む複数の国で、今大会は放映権の交渉が難航し、なかなかテレビ放映が決定しないという事態が生じました。FIFAは、2021年にW杯の放映権を男子と女子で切り離しています。そのため、女子サッカーW杯の放映権が単独で販売されたのは今大会が初めてとなったのです。FIFAが男子W杯に近い額の放映権料を希望したのに対して、各国の放送局が提示した額は男子W杯の放映権料を大きく下回りました。女子サッカーは男子サッカーと比べて注目度が低く、観る人が少ないと考えられたのです。

今回の女子サッカーW杯は、男女格差の是正に向けて確実に大きな一歩を踏み出したと評価できるでしょう。一方で、未だ埋められない差も存在しており、今後より一層の改善が求められています。

Text by NewSphere 編集部