フェミニストとはどんな人?日本や海外での考え方をわかりやすく簡単に
SNSが発達した現代社会では、フェミニストを公言する海外セレブの発言が注目される。一方日本では、ネガティブな意味合いでフェミニズムが浸透しているようだ。フェミニストとは本来「性別に関係なく、すべての人々の平等な権利を願う人」である。しかし、その意味することは、国や時代と共に変わり、誤解やネガティブなイメージも生まれてきた。今回は、フェミニストとはどんな人なのかを深掘りしていく。
目次
フェミニストとは?
フェミニストとは、女性の権利だけを主張したり男性を嫌悪したりする人ではない。
男性批判だと広く誤解され、世界中でフェミニストが肩身狭い思いをするようになっている。しかし、本来のフェミニストの考えを知れば、誰もが住みやすい世界を願っていることがわかる。
性にとらわれず多様性を認め合う社会を願う
フェミニストとは、男らしさ・女らしさなど性にとらわれず多様性を認め合う社会を願う人のことである。女性の権利を主張した運動が目立つため、「女性だけの権利を保護すればよい」と捉える偏見が広がったのだろう。
本来は、男性も含む文化的に作られた性の価値観から社会に根付いた構造的な性差別まで、意味合いは多岐に渡る。
また、フェミニストの根底には、国や人種、宗教などさまざまな価値観を認め合い、多様性を尊重する思いがあることを忘れてはいけない。それは、男性にとっても自分らしく生きるために大切な考え方であり、当然、男性のフェミニストも存在する。
男性批判と誤解され世界に広まった
残念ながら、一部で「フェミニストは男性批判だ」と誤解され、誤った認識が世界に広まっているのも事実である。
SNS上で気軽に考えを共有できるため、さまざまな立場から意見が飛び交い盛り上がりを見せる。一方、中には揚げ足を取ったり、誤解を生む言い方をしたりすることもある。「女性を擁護した発言をすれば男性嫌悪だ」という捉え方をする人が多く存在するのだ。
実際に2018年に行われたイギリスの調査から、男女平等に扱われるべきと答えた人が81%いるのにもかかわらず、その半数以上がフェミニストであると公言するのをためらっていることがわかった。フェミニストが特定のグループを排除することは絶対にないことを、もっと周知されるべきだ。
フェミニストの考えの移り変わり
19世紀末に起こったフェミニズムは時代と共に主張がアップデートしている。現在は第4波が来ているといわれるが、フェミニストの考えがどのように移り変わっていったのか、第1波から第3波までをみていく。
フェミニストの始まり
19世紀末に欧米で第1波と呼ばれるフェミニズムが起こる。
はじまりはフランスだった。男性中心の議会でフランス人権宣言を採択したものの、男性にしか与えられなかった権利に女性たちが抗議したのだ。イギリスでもサフラジェットという女性たちが参政権を獲得し、アメリカでは、「女の独立宣言」が提出されるなど、フェミニストの活動が世界中で広がりを見せた。
遅れて日本でも、平塚らいてうが1911年に女性初の文芸誌『青鞜』を創刊し、「原始女性は太陽であった」という言葉を残している。第1波でフェミニストは、女性が参政権・相続権・税政権など男女平等な法的権利を持つこと、女性にも高度教育を受ける権利があることを主張している。
女性の固定概念を壊すフェミニストが出現
フェミニストは第1波において参政権の獲得しかできず、女性の社会的地位はまだ低いままだった。それが1960年代〜70年代にアメリカで起こった「ウーマン・リブ」という女性解放運動へと広がっていく。
第2波フェミニズムでは、男女平等の権利を求めるだけではなく、ジェンダーに縛られない職業選択や、避妊や中絶など性に関しての自己決定権を主張している。日本にも広がりを見せたこの議論は、女性の社会進出を大きく前進させることとなった。
第2波のフェミニストは、社会的に作られた男女の固定概念「女性らしさ・男性らしさ」の撤廃を投げかけているが、現在でも「性にしばられない自分らしい生き方とはなにか」と考えさせられる。
多様性を主張するフェミニストの台頭
1980年代〜90年代に第3波フェミニズムが起こる。多様性を主張するフェミニストの台頭である。「インターセクショナリティ」や「ダイバーシティ(多様性)」を重視し、人種や宗教など個人を構成するすべてが平等であるという価値観だ。
マイノリティ(少数派)が差別されている問題に焦点を当てたアメリカ法学者であるキンバリー・クレンショーが提唱したことがきっかけだった。白人女性だけではなく黒人やその他の人種、他にも宗教や性的志向などのマイノリティに生きる人々の多様性を認め、自分らしく生きることを求めた運動をインターセクショナリティという。
世界的な著名人の多くがフェミニストを公言し、ジェンダーによる議論も盛んに行われたのもこの時代であった。
現代のフェミニズム運動
現在、第4波フェミニズムの渦中に我々はいる。SNSで誰もが主張でき、ハッシュタグをつければ世界中に拡散する時代である。
現代のフェミニズム運動を盛り上げた「#MeToo」や、日本で話題になった「#KuToo」を紹介する。
海外のフェミニズム運動「#MeToo」
始まりはアメリカの歌手であり女優であるアリッサ・ミラノのツイートだった。「セクハラや性的被害を受けたすべての女性が『MeToo』と書けば、問題の深刻さを知ってもらえるだろう」と投稿したのだ。
今まで沈黙され続けてきた性的被害の問題について、上記のツイートから多くの著名人の告白に繋がった。やがて日本など世界中に、「#MeToo」運動は広がっていく。
日本のフェミニズム運動「#KuToo」
日本でも話題になっていた「#MeToo」と「靴」「苦痛」をかけ合わせて作られた「#KuToo」をハッシュタグにして投稿するフェミニズム運動が、日本でも起こった。
モデルであり、当時アルバイトとして葬儀場で働いていた石川優実さんが疑問を持ったことがきっかけだ。就業規則やマナーとして、女性だけがヒールやパンプスを強いられ、足の痛みや健康被害を被っている。男性はクールビズなどで軽装が許されているのに、どうして女性だけが我慢しなければいけないのか。
多くの女性が賛同し、署名は1万8000人以上集まり、法規制の要望書を厚生労働省へ提出している。
フェミニストを公言している海外の有名人
フェミニストを公言している人の言葉を聞いて、影響されることもあるだろう。中でも特に影響力を持った海外の有名人を3人紹介する。
90年代から音楽界で活躍する大物歌手ビヨンセは、当時アメリカにおいてフェミニストのネガティブイメージを塗り替え、本来のフェミニズムの意味を伝えた。
2014年人気音楽番組のステージパフォーマンスで「フェミニスト」の文字を掲げ、楽曲『***Flawless』を歌い上げたのだ。『***Flawless』では、黒人女性フェミニストであるチママンダ・ンゴズィ・アディーチェのスピーチを歌詞の一部に引用している。
フェミニスト宣言をしたビヨンセが共感したというスピーチの一部を下記に示す。
女の子たちは萎縮するよう教育されます。ちぢこまっていなさいと。
我々は彼女たちに言うのです。〝あなたは野心を持てる、でも大きく持ちすぎてはいけない。
成功しなさい、でも成功しすぎちゃ駄目。男たちの脅威になってしまう(中略)
フェミニストとはなんでしょう。それは性別間の社会的、政治的、経済的平等を信じる者です。
出典:TED「The danger of a single story」
2016年、女性誌に「これがフェミニストの顔」と題したエッセイを寄稿したオバマ元大統領も、フェミニズムについて語っている。
オバマ氏自身が共働き時代に、妻に負担を強いていたことを告白した上で、下記のように述べた。
「男性がおむつを替えたからと褒めたり、専業主夫に汚名を着せたり、働く母親を罰したりする態度を変える必要がある」
「女の子は控えめに、男の子は自己主張を、といった育て方も変えるべきだ」
出典:GLAMOUR「Glamour Exclusive: President Barack Obama Says, “This Is What a Feminist Looks Like”」
さいごに、ハリーポッターで一躍有名になった、女優のエマ・ワトソンを紹介する。彼女はフェミニストとして精力的な活動をしており、2014年に国連組織UN Womenの親善大使に任命され、「HeForShe」ムーブメントではスピーチを行った。
原稿を書き上げるのに半年かかったというスピーチの一部を、以下に取り上げる。
私が8歳のとき、(学校で)保護者向けに私たちが演じる演劇の演出をやりたかったのですが、でも男の子たちはそうじゃなく、「偉そう」と言われて混乱しました。
私が14歳のとき、特定のメディアに性的な対象として描かれました。
私が15歳のとき、友達の女の子たちが大好きなスポーツ・チームを男っぽく見られたくないからという理由でやめはじめました。
私が18歳のとき、男性の友人たちは自分の気持ちを表に出せずに苦しんでいました。
私はフェミニストであろうと決心しました。
出典:YouTube「Emma Watson at the HeForShe Campaign 2014 – Official UN Video」
フェミニストとは男女平等と多様性を認める人である
フェミニストとは、男女平等の価値観やマイノリティを含む多様性を認める人である。日本でも男女の性差による役割がまだまだ残っている。「長男だから家を継ぐ」「女性だから家事をする」など、探せばきりがない。
自分らしく生きづらいと感じたとき、フェミニストのあり方を思い返し、理解を深めるきっかけになることを願う。SNSで誤解されてきたフェミニストであるが、グローバルで対等な社会の実現には必要な考えであり、これからも議論されていくだろう。
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