北米で「腐女子」現象? カナダ発BLドラマに熱狂、海外メディアが分析
ドラマ『ヒーティッド・ライバルリー』のワンシーン|Sabrina Lantos / HBO Max via AP
男性アイスホッケー選手2人の間に芽生える恋を熱く官能的に描いたドラマ『ヒーティッド・ライバルリー』が北米を中心にセンセーションを巻き起こしている。特に注目されているのは、その視聴者の多くが女性である点だ。女性視聴者の割合は約3分の2に達したとされ、男性同士の恋愛を描く作品でありながら女性ファンの熱狂的な支持を集めている。
◆女性に大人気 予想外の大ヒット作に
『ヒーティッド・ライバルリー』は、カナダの最大級のストリーミングサービス、クレイヴ(Crave)で昨年11月から配信された、同名小説を原作とするドラマ。2人のアイスホッケー選手の間に芽生える恋と密やかな関係を濃厚な性描写を交えて描き、初回配信以来人気となり、クレイヴ発のドラマとして異例のヒットとなった。アメリカ、イギリスでも放送され、全6話の配信期間中に視聴時間は急増し、最終回の週には初週の10倍以上にまで伸びたとされる。熱狂的人気は続いており、すでにシーズン2の制作が決定している。
この番組が人々を驚かせているのは、最大の支持層がゲイ男性ではなく、女性視聴者である点だ。アメリカでの配信を行うHBOの担当者によれば、最終回配信の4日前時点で視聴者の53%が女性で、その後には視聴者の約3分の2が女性になっていたという。(ニューヨーク・タイムズ紙)
◆BLは女性にとっての幻想? 腐女子文化は世界に
ブルームバーグ・オピニオンのコラムニスト、ハワード・チュア・オアン氏は、『ヒーティッド・ライバルリー』のヒットは、男性同士の恋愛やエロティシズムを描くボーイズラブ(BL)作品を愛好する女性ファンの存在を考えれば、驚くことではないと指摘する。こうした女性ファンは日本では「腐女子」と呼ばれている。
同氏は、BL漫画は1970年代に漫画家や作家として女性が台頭したことから始まったと解説。当時、女性の性やそれにまつわる感情を扱うことはタブーだったが、互いに恋する美しい少年たちにはそのような制約はなく、より幻想的で非日本的な見た目であればあるほど好ましい、または安全だと考えられたという。描かれる男性美に影響を与えたのは、映画『ベニスに死す』で知られるスウェーデンの俳優、ビョルン・アンドレセンの美しい顔立ちだった。美少年アンドレセンは日本国内で一大センセーションを巻き起こし、漫画の世界での少年や男性の顔に反映され、幻想という覆いの下で日本の女性たちに愛と情熱を探求する自由をもたらす一助となったとされる。
BLジャンルやそれを愛好する腐女子文化は、中国、台湾、韓国、タイなどにも広がっており、『ヒーティッド・ライバルリー』のヒットは、北米にも膨大な数の腐女子が存在することを示す証拠だと同氏は指摘している。
◆欲しいのは情熱とロマンス 親密さこそ魅力
背景には、カジュアルな関係や孤独感の広がりなど、現代の恋愛や人間関係をめぐる社会状況もあると指摘されている。
もっとも、原作のレイチェル・リード氏の見方は少し違う。「私の女性読者の多くは男性との性行為という暗い過去を抱えており、作品に女性が出てこないことを好む」とし、性描写に自分を投影しないほうが安心できるため、ファンタジーの世界に没入したがると説明している。(エンタメ誌ハリウッド・リポーター)
一方、米UCバークレー大の学生新聞、デイリー・カリフォルニアンは、女性がこのゲイ男性の恋愛物語に共感する真の理由は、多くの女性が彼らのような親密さを渇望しているからではないかと指摘。だれもが求められ、ありのままの自分を受け入れてもらいたいと願っているからだとした。
実際に、性や人間関係に焦点を当てたセラピーの専門家たちは、この番組の魅力は官能的な関係から深く理解し合う関係に発展していくことだと分析。カジュアルな関係や一夜限りの関係が蔓延する現代において、深い愛情へと移行する2人のようなモデルが特に必要とされていると見ている。ワシントン大学の性科学教授、ニコール・マクニコルズ氏によれば、性別や年齢、性的指向を問わず、人々の性的幻想のトップは情熱とロマンスだという。私たちは皆「求められたい」と願い、求められること自体が強力な媚薬になるとしている。(CNN)




