『国宝』北米レビュー NYTは高評価、175分には賛否
©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025映画「国宝」製作委員会
歌舞伎の世界を描いた映画『国宝』が、2月20日から北米の主要都市で一般上映される。日本国内で邦画実写映画の歴代興行収入第1位を記録した話題作だ。北米の映画ファンがこの約3時間の大作をどう受け止めるのか注目される。
◆興収198.8億円 アカデミー賞ノミネートも追い風
『国宝』は2025年6月公開。吉田修一の同名小説を原作に、歌舞伎の世界を舞台に血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切りが交錯する役者人生を描く。上映時間は175分。それでも邦画実写としては22年ぶりに歴代1位を更新するメガヒットとなった。
興行通信社によると、興行収入は198.8億円(2月8日時点)に達している。日本映画史に刻まれるヒットとなった。
北米では2月6日からニューヨーク、ロサンゼルス、トロントで先行上映が始まり、20日以降は主要都市へと拡大する。さらに第98回米アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング部門にノミネートされたことも追い風となり、現地メディアの関心も高まっている。
◆冒頭の衝撃に高評価
北米の批評家レビューも出ている。とりわけ評価が高いのが、1960年代の長崎を舞台にした冒頭シーンだ。任侠の新年会で、親分の息子・喜久雄(吉沢亮)が女形を披露し、その才能を半次郎(渡辺謙)に見いだされる。しかし場面はヤクザの抗争へと発展し、激しい暴力が物語を一気に加速させる。
米公共ラジオ(NPR)はこの場面を「息をのむほど壮観」と評し、ニューヨーク・タイムズ紙は「衝撃的な導入部が長い上映時間を通じて物語を推進させる手品のような仕掛けだ」と指摘した。
◆豪華絢爛な映像美
映像面への評価も高い。カナダのグローブ&メール紙は、撮影監督ソフィアン・エル・ファニが劇場空間の輝きをスクリーンいっぱいに描き出したと称賛。舞台上と舞台裏を行き交う喜久雄と俊介(横浜流星)、華やかな衣装、長めのクローズアップなどを挙げ、「豪華絢爛な映像美」と評した。
CGMマガジンは、主人公以上に舞台パフォーマンスそのものが主役だと強調。古典歌舞伎を大胆に取り込んだ演出は壮大で、「最大級の4Kスクリーンと音響で体験する価値がある」としている。
◆約3時間をどう見るか
一方で賛否が分かれたのが約3時間という長尺だ。CGMマガジンは「特に長すぎるとは感じない」とし、むしろ説明不足な部分もあると評価。グローブ&メール紙も短縮の余地はあるとしつつ、退屈ではないと述べた。
しかしニューヨーク・タイムズ紙は、前半は秀逸だが後半は勢いを失い、メロドラマに傾きすぎると指摘。NPRも「3時間目に入ると物語は薄くなる」と評する。リール・フィルム・レビューズはさらに厳しく、「長すぎる失敗作」と断じた。
一方で、全体としては好意的な評価も多い。映画批評集積サイトのロッテン・トマトでは、批評家スコア93%、観客スコア95%と高評価を維持している。
アメリカでは興行成績が翌週以降の上映規模を左右する。約3時間という長さがハードルとなるのか、それとも圧倒的な映像体験がそれを上回るのか。国内で歴史的ヒットを記録した『国宝』の真価が、いよいよ北米市場で試される。




