プレミアリーグ:赤は勝利、灰色は敗北 ユニフォームの色がいかにパフォーマンスに影響するのか

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著:Zoe Wimshurstヘルスサイエンス大学、Senior Lecturer of Sport Psychology)

 プレミアリーグのシーズンが開幕すると、ファンは新戦力と同じくらい新ユニフォームについて議論する。しかし、シャツの色は実際にチームのパフォーマンスに影響を与えるのだろうか? 科学的には「あり得る」と示唆されている。

 スポーツにおける色効果で最も研究されているものの1つが、赤いユニフォームが成功につながるというものだ。プレミアリーグ発足以来、優勝チームの半数以上がホームユニフォームに赤を採用しており、2004年のオリンピックを調査した研究では、赤と青がランダムに割り当てられる格闘技において、赤を着用した選手の方が勝ちやすいと報告されている。

 この効果はラグビーリーグや、eスポーツ(ビデオゲーム競技)でも確認されている。

 なぜなのか? 文化的・生物学的な観点から、赤は支配や攻撃性と結びつけられているとされる。赤を着用すると選手はより優位性を感じやすくなり、逆に相手選手が赤を着ているとより脅威として認識されることがわかっている。

 別の研究では、テコンドーの審判は、赤のユニフォームを着た選手に青のユニフォームを着た選手よりも多くのポイントを与えることが明らかになっている(デジタル操作によって色を反転させ、全く同じ試合を見せた場合も同様)。サッカー選手に関する研究でも、赤いユニフォームを着たゴールキーパーと対戦すると、ストライカーの得点が少なくなることがわかっている。

 他に有効な色もある。クリスタル・パレスが選んだゴールドは昼夜問わず高い視認性を持つ有力な選択肢だ。チェルシーやノッティンガム・フォレストが選んだ白のような明るい色は、ピッチとのコントラストが高く目立ちやすい。

 心理学ではこのような色を「カラー・シングルトン」と呼び、人間の注意は自動的にそこに引き寄せられる。ピッチや広告板に存在しないような珍しい色は、選手を一目で見つけやすくする。

 模様も重要だ。コントラストの高いブロック柄やストライプは、動く対象を背景から際立たせる。ボーンマスのストライプ柄のアウェイユニフォームは、無地のミッドトーンのシャツよりも視認性が高くなるはずだ。フラムのアウェイユニフォームの蛍光色の上半身と、比較的暗いショーツのコントラストも、認識力を高めるだろう。

◆カモフラージュ効果
 それにもかかわらず、今シーズン、アウェイユニフォームに赤を選んだプレミアリーグクラブは1つもない。代わりにライラック、クリーム、ターコイズなど新奇な色が採用されている。過去にもユニークなユニフォーム選択が失敗した例があり、1996年にはマンチェスター・ユナイテッドのグレーのアウェイユニフォームが、サウサンプトン相手に0-3とリードされた試合中にお蔵入りになった

 監督のアレックス・ファーガソンは、選手同士が互いを「見えなかった」と主張した。単なる言い訳ではなく、そのグレーはスタジアムのコンクリートに近く、観客の中に紛れてしまったのだ。

 このようなカモフラージュ効果は生物学でもよく知られており、実際、動物は捕食者から見つからないよう利用している。スタジアムでも、鈍いグレーや茶色は同様の効果をもたらす。ブレントフォードの新しい茶色のアウェイユニフォームは、特に曇りの日やコンクリート壁のスタンドでは、同じ問題を引き起こす可能性がある。黒のユニフォームも光量が少ない状況では背景に溶け込みやすい。

 今シーズン、トッテナム、マンチェスター・シティ、アストン・ヴィラはいずれも黒のアウェイシャツを採用しており、味方の視認性が下がる可能性がある。

 カモフラージュはくすんだ色に限らない。ニューカッスルの緑のアウェイユニフォームは明るい色だが、人間の視野周辺部では色を識別しにくいため、芝生に溶け込んでしまう可能性がある。

 もう1つの微妙な視覚効果が「背腹反射(カウンターシェーディング)」で、上部が濃く下部が明るいグラデーションが輪郭を分かりにくくする。サッカーでは、暗いシャツと淡いショーツの組み合わせが、強い日光の下で選手の輪郭をぼかす可能性がある。これは捕食者を避ける動物には有効だが、自チームのストライカーが空いたスペースにいるのを見つける際には不利となる。

 ではなぜクラブはこの科学を活用しないのか? おそらく答えは商業的なものだ。アウェイユニフォームはパフォーマンス向上だけでなく、ユニフォームを「売る」ことが目的だからだ。奇抜な色は話題を呼び、売上を伸ばし、ストリートで目立つ一方、ピッチ上では背景に溶け込んでしまう。

 色は単なるファッションではない。心理学、知覚、物理とも深く結びついている。正しい色味は選手を「見逃させない」存在にし、間違った色は「消えてしまう」存在にする。成功と失敗の差が紙一重のエリートスポーツにおいて、ユニフォームの色は決して見過ごしてはならない要素だ。

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by NewSphere newsroom

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