世界を席巻、K-POPアニメ映画『デーモンハンターズ』 楽曲もグッズも大人気

アメリカのイベントでルミのコスチュームを着たファン|Andrew Park / Invision / AP

 K-POP音楽とアニメーションが出会ったファンタジー映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』が、今まさに世界を席巻中だ。ネットフリックスの英語映画部門で堂々の世界第1位を獲得し、2025年最大のヒット作になるとの声も高まっている。劇中に登場するガールズグループが歌う主題歌はビルボードにもランクインするなど、音楽面でも圧倒的な存在感を放っている。

 その人気の秘密は、「歌って、踊って、戦う」K-POPアイドルたちの姿にあるのかもしれない。

◆93カ国でトップ10入り、破竹の勢い
 『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』は、超自然的な脅威に立ち向かう架空のK-POPガールズグループを描いたアニメ映画。BBCによると、6月20日の配信開始からわずか2週間で、再生回数は3300万回を突破。ネットフリックスの世界チャートでトップに立ち、93カ国でトップ10入りという快挙を達成した。

 コリアンタイムズによると、韓国を含む11カ国では、配信から1週間以上にわたって1位の座を維持した。

 さらに、映画情報サイト『スクリーンラント』によると、7月7日から13日の1週間で2420万ビュー、視聴時間は実に40.4時間に達し、英語映画部門で世界第1位を記録したという(7月15日時点)。

 物語の主人公は、女性3人組のK-POPグループ「Huntr/x(ハントゥル・エックス)」。メンバーのルミ、ミラ、ゾーイは世界的スーパースターとして活躍する一方で、超自然的なフォースと戦う「守護者」としての顔を持つ。彼女たちは、悪霊の世界から現れた謎のボーイズグループ「Saja Boys(サジャ・ボーイズ)」と壮絶な戦いを繰り広げる。

◆サウンドトラックもビルボードを席巻
 話題になっているのは映画だけではない。音楽シーンでも『デーモン・ハンターズ』は大旋風を巻き起こしている。

 6月20日の公開以降、作中に登場する2組の架空K-POPグループ──ヒロインたちによる「Huntr/x(ハントゥル・エックス)」と、ダークで妖艶なライバル「Saja Boys(サジャ・ボーイズ)」──が、BTSやBLACKPINKといった実在のトップアーティストをもしのぐ勢いで、世界中の音楽チャートを賑わせている。

 映画のサウンドトラックからは、7曲がビルボード・ホット100にランクイン。SpotifyのUSチャートでも「Huntr/x」の楽曲が1位と2位を独占するという快挙を達成した。

 その中でも特に注目を集めているのが、「Huntr/x」が歌うシングル『ゴールデン』。ビルボードが14日(現地時間)に発表したチャートによると、『ゴールデン』は前週から17ランクアップし、ホット100で6位に浮上。さらに、ビルボード・グローバル・エクスクルーディングUSチャートおよびグローバル200チャートでは、1位を獲得した。

 ビルボードによると、バーチャルアーティストが両グローバルチャートで首位を取るのは、2020年のチャート創設以来初めての出来事となる。

 米バラエティ誌によると、ネットフリックスはこの楽曲『ゴールデン』を、2026年のアカデミー賞・オリジナル楽曲賞部門に正式エントリーする意向を示しているという。

◆K-POPのファンの世界を疑似体験
 『デーモン・ハンターズ』が予想を超える成功を収めた理由として、BBCは「音楽の力」と「ファン文化の再現性」を挙げている。

 共同監督の一人である韓国系カナダ人のマギー・カン氏は、自身がK-POPアイドルに憧れていた少女時代の経験を作品に投影したという。Netflixの取材では「K-POPファンに本当に響く、素晴らしい音楽にしたかった。K-POPの世界にきちんとフィットする本物のものにするためには、韓国のレーベルと提携することが重要だと感じた」と語っている。(BBC)

 実際、音楽面ではBLACKPINKと数々のヒット曲を生み出したテディ・パーク、そしてBTSやTWICEの楽曲でグラミー賞を受賞したリンドグレンといった、トップクラスのプロデューサー陣が制作に参加。

 さらに、作品にはK-POPカルチャーに欠かせないディテールも多数盛り込まれている。ファンミーティングでのサイン会、観客が振るカラフルなライトスティック、韓国語(ハングル)の応援プラカードなど、リアルなK-POPファンの世界が細部まで描かれており、観る者に「本物のファン」になったかのような体験を提供している。(BBC)

 スクリーンラントは、作品のもう一つの大きな魅力として、「アニメーションの美しさとダイナミズム」を挙げている。制作は『スパイダーバース』シリーズを手がけたソニー・ピクチャーズ・アニメーションのチーム。大胆で色彩豊かなビジュアル、スタイリッシュで躍動感あふれるアクションが特長で、「これまでのどのアニメ映画よりもエキサイティング」と評価されている。

 劇中では、主人公たちが悪霊と戦うシーンが「Huntr/x」の楽曲に合わせて展開され、まるでハイレベルなミュージックビデオを観ているかのような感覚に陥る。音楽とアニメーションが完全に融合した、没入感のあるエンターテインメントとなっている。

◆グッズも爆発的売れ行き
 『デーモン・ハンターズ』の人気はスクリーンの中だけにとどまらず、グッズ市場でも爆発的なブームを巻き起こしている。

 特に注目されているのは、劇中に登場する虎のキャラクター「ダーピー」と、カササギの「スージー」をモチーフにしたアイテムたち。韓国の伝統民芸からインスピレーションを受けたこのキャラクターグッズは、発売と同時に即完売が続出。ダーピーのぬいぐるみはNetflixの公式オンラインストアで早々に売り切れ、入手困難に。ファンたちは代わりに、コラボ商品を扱う韓国国立博物館のミュージアムショップにまで足を運んでいるという。

 実際に国立博物館財団のオンラインショップでは、映画公開前は1日あたり7000人ほどだった訪問者数が、公開後にはなんと50万人超に急増。70倍以上のアクセス増という驚異的な数字が記録されている(コリアンタイムズ)。

Text by 中沢弘子