「日本の軽自動車」禁止に、米の愛好家ら猛反発 その結果… マサチューセッツ州

Scarlet Sappho / flickr

 安価で実用的な日本の軽自動車は、アメリカでも人気だ。「kei car」として親しまれ、中古車を日本から個人輸入する人々も少なくない。だが、マサチューセッツ州では軽自動車の自動車登録を禁止する動きがあり、オーナーや愛好からの反発を呼んでいる。

◆安全基準に適合せず
 東海岸に位置するマサチューセッツ州は、ボストンを州都とする人口約700万人の州だ。州の自動車登録局(RMV)は、軽自動車が連邦自動車安全基準(FMVSS)に適合していないと判断し、登録を禁止する方針を打ち出した。米ドライブ誌(7月23日)によると、すでに登録されている車両の登録も取り消され、更新も不可能であるとの警告がオーナーたちに届いているという。

 米高速道路安全協会(NHTSA)は、軽自動車がFMVSSに適合しておらず、道路での使用を推奨していないと述べている。米自動車管理者協会(AAMVA)も同様の見解だ。米自動車メディアのオートピアは、こうした見解が禁止の根拠になっているとみる。

 オーナーたちは矛盾に頭を抱える。日本からの軽自動車の輸入が可能になっていた背景に、いわゆる「25年ルール」がある。クラシックカーを念頭に、製造から25年以上経過した車両であれば、安全基準にかかわらず輸入が許可される措置だ。

 マサチューセッツ州のWBZニュースラジオによると、RMVは禁止通達のなかで25年ルールに触れているが、禁止令の正当性については特に説明していない。「RMVはその権限において、これらのミニトラックおよびバンの登録を行わず、タイトル(所有証明)を発行しない」とだけ述べている。

◆戸惑うオーナーたち
 オーナーや愛好家らには困惑が広がる。スズキ・キャリイを所有するマット・イスグロ氏はドライブ誌に、「車がFMVSSを満たしていないとオーナーたちは通達されているが、25年以上経過した車は例外として認められているはずだ」と不満をあらわにする。

 輸入会社のノースイースト・オート・インポートを経営するデレク・グリフィス氏も、RMVの突然の方針変更に動揺を隠さない。WBZニュースラジオの取材に、「こうした車はカリフォルニア州やニューヨーク州でも問題なく登録されているのです」と説明している。

 禁止にあたり、RMVが軽自動車を十分に理解していなかったとの指摘もある。ドライブ誌によると、RMVのトレーニング資料には、本来軽自動車ではないトヨタ・ライトエースやタウンエースが軽自動車に分類されているなど、誤った情報が含まれていることが明らかになっている。

 一方、これまでにもメイン州がFMVSSに適合しないすべての車両を「オフロード車両」とみなし、25年ルールにかかわらず輸入を禁止する厳しい措置を取っている。こうした動きはアメリカのいくつかの州に広がる。

◆RMVは方針を一部見直し
 激しい反発を受け、マサチューセッツ州RMVは方針の一部見直しに着手した。7月19日には、すでに登録されている車両については登録を維持できる方針を打ち出したほか、政策の再評価を行うことを発表した。WBZニュースラジオは、オーナーたちが州議会や上院議員に対して行ったロビー活動の成果として取り上げている。

 オートピアによると、かつてテキサス州でも軽自動車禁止の動きが存在した。同州で撤回運動を成功させたデイビッド・マククリスチャン氏が、マサチューセッツ州の禁止撤回運動に協力している。州の軽自動車禁止政策の詳細をリークし、愛好家たちに情報提供を行っているという。

 RMVのウェブサイトには、「RMVは現在、軽トラックの登録に関する政策を見直している。現在有効な軽トラックと軽バンの登録は、RMVが軽トラックに関する業界標準の見直しと評価を行い、これらの車両の登録に関する新たな政策を策定するまでの間、引き続き有効である」と記載されている。

 軽自動車が愛用されるなか、突然の方針変更が思わぬ混乱を呼ぶ形となった。

Text by 青葉やまと