うんち抗議は延期 浄化に2400億円も…依然汚いセーヌ川 パリ五輪までわずか
開幕が間近に迫ったパリ五輪だが、トライアスロンなどの競技会場となるセーヌ川の水質改善が不十分なことが問題視されている。多額の費用を投入し浄化を進めてきたが、いまだに水質は泳げるレベルにはないと判明。五輪に批判的な市民の不満も、ますます高まっている。
◆そもそも汚すぎて遊泳禁止だった… 改善進まず
セーヌ川では、トライアスロンやマラソンスイミングが予定されている。スポーツおよび政治解説サイト『アウトキック』によれば、川にはゴミと汚水が広がっており、1923年以来泳ぐことは違法とされてきた。そこで、安全に泳げる水質にするため、これまでに14億ユーロ(約2400億円)以上が投入されている。
しかし、最新の報告書によれば、最初のトライアスロン競技まであと5週間という時点で、水質はあまりにも悪かった。採取された水のサンプルからは、大腸菌を含む2種類の細菌が高率に検出され、大会のために設定された基準を満たしてはいなかった。(スカイニュース)
パリの下水道網は19世紀後半から整備されてきたもので、大雨が降れば家庭の汚水が直接セーヌ川に流れ込むことがある。つまり、し尿が川にあるのと同じだ。昨年は、水中の大腸菌レベルが高いという理由で、いくつかのテストイベントが中止されている。
◆「セーヌ川でうんちを」抗議運動勃発
マクロン大統領とパリのイダルゴ市長は、水質が改善されたことを証明するため、五輪開催前に必ずセーヌ川で泳ぐと表明。23日はイダルゴ市長が泳ぎ、水がきれいなことを証明する予定だった。
ところがこの計画と並行し、「23日にセーヌ川でうんちをしよう」というムーブメントが市民側でスタート。政治家たちが泳ぐ際、うんちが彼らに届くように計算するウェブサイトが立ち上げられ、参加が呼びかけられた。サイトには、「彼らが我々を糞の中に投げ込んだ。今度は彼らが我々の糞に飛び込む番だ」というスローガンが掲げられている。
スカイニュースによれば、ほかの社会問題が放置されているにもかかわらず、セーヌ川の清掃活動に多額の税金が投入されたという事実に、市民の不満が募っているという。サイトを運営する匿名のプログラマーは、「身近な社会問題より五輪のほうに政府の優先順位があったと知り、我々には見捨てられたという思いがある」と現地のニュースサイトに語ったという。
結局、イダルゴ市長の水泳は、フランスの選挙を乗り切るために時間が必要という理由で7月中旬に延期となった。マクロン大統領の予定も未定だという。これを受け、川でうんちをする抗議活動のほうも、保留という形でひとまず収まった。
◆競技中止も? 代替プランなし
川は明らかに五輪選手たちを迎える準備ができていないが、パリ地方政府のマルク・ギヨーム知事は、夏の乾燥した天候が問題を解決してくれるだろうと楽観的な見方を示した(AFP)。
ランニング情報誌、カナディアン・ランニング・マガジンによれば、パリ五輪のマラソンスイミングのバックアッププランはないという。選手たちはトレーニング開始のための試泳ができない状況だ。
AFPによれば、もしバクテリアのレベルが今のままであれば、トライアスロンでは水泳を中止しデュアスロンになる可能性がある。参加する選手たちのためにも、さらなる水質改善は急務だ。