男性差別判決を受けた豪美術館、驚きの「トイレ策」で対抗 女性限定展示室めぐり
オーストラリアの現代美術館が、男性による差別を表現するため展示室への入室を女性に制限したところ、性差別にあたると男性に訴えられ、物議を醸している。美術館側は対抗手段として、入室を女性に制限したまま作品を閲覧できる、ある名案を思いついた。
◆男性バトラーがおもてなし、女性専用ラウンジ
オーストラリアのタスマニア州にある現代美術館「ミュージアム・オブ・オールド・アンド・ニュー・アート(MONA)」が、女性差別を訴えるために設置した豪華な緑のベルベット張りの女性専用の展示室が、性差別にあたるとして男性に訴えられた。
アメリカ人アーティスト、キルシャ・カシェラ作の『レディース・ラウンジ』と題された展示室は、1965年まで女性がほとんど排除されていた、女性差別的な昔ながらのオーストラリアのパブをコンセプトに、2020年に開設された。
豪華な内装の女性専用スペースでは、女性を自認する人々に男性バトラーがシャンパンと最高級サービスを振る舞う一方、入口で男性の入室を断るというのがコンセプトだった。
このスペースには、美術館で最も重要な所蔵品であるシドニー・ノーラン、パブロ・ピカソ、メソポタミア、中央アメリカ、アフリカの古美術品など数々の作品が展示されている。
◆女性限定の展示室は違法
シドニー在住のジェイソン・ラウ氏が昨年4月に美術館を訪れた際、展示室への入室を拒否されたことから、州の差別禁止法に抵触しているとして提訴した。
美術館は、ラウ氏が感じた拒絶も作品の一部だと反論。タスマニア州の法律では、歴史的に不利な立場に置かれてきた人々のために「機会均等を図るのが目的」であれば、差別は認められていると主張した。(BBC、4/10)
しかし、タスマニア州の民事・行政裁判所は3月、美術館の主張を不当とし、女性と自認していない人の展示室への入室拒否をやめるよう命じた。
美術館には28日間の移行期間が与えられたが、今月6日にその期限を迎えた。同展示室は現在、一般公開を中止している。
◆法の抜け穴は、女性用トイレへの改装
美術館は7日、裁判所は女性の歴史的、現在進行中の社会的不利という観点において、「あまりにも狭い視野に立ちすぎている」と述べ、レディース・ラウンジは「機会均等を促進できる」と主張し、上訴を申し立てたとする声明を発表した。
カシェラさんは、「(女性が)過去数千年にわたり経験してきたことを考えれば、私たちは、少なくとも300年にわたる不平等な権利、あるいは騎士道精神という観点において、平等な権利と償いの両方を受けるに値するのです」と主張する。
現在、差別法の抜け穴をかいくぐり、ベルベットで覆われたラウンジを女性用トイレと教会に改装する計画を進めている。カシュラさんは、「レディース・ラウンジは、素晴らしいトイレを設置することで、女性用トイレとして稼働することになります」と説明する。(BBC、5/7)
また、男性は日曜日にのみ、洗濯物のたたみ方とアイロンのかけ方を学ぶため、入室を認めるようにするという。「女性はきれいな洗濯物をすべて持ち込むことができ、男性は一連の優雅な動きで洗濯物をたたむことができるのです」と語る。
BBCによると、45日以内に完成する予定だが、展示の閲覧を中断させないため、既存の女性用トイレにピカソといった主要作品の一部を移動させるという。