イギリス人怒り、米科学者の紅茶のいれ方アドバイスに 米国大使館が火消しに

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 あるアメリカ人科学者が、イギリスが大好きな温かい飲み物についてアドバイスしたことで、大西洋越しにちょっとした騒動を引き起こした。

 ブリンマー大学化学教授のミッシェル・フランクル氏は、完璧な紅茶をいれる一つのカギは塩をひとつまみ入れることだと言う。このアドバイスは、「Steeped: The Chemistry of Tea」という王立化学協会から24日に出版されたフランクル氏の著書に書かれている。

 ボストン茶会事件以降、紅茶に塩水を混ぜることがこれほど英米関係を揺るがしたことはない。

 この塩の提案に対し、イギリスの紅茶愛好家から怒りの声がわき上がった。イギリスの一般的なステレオタイプでは、アメリカ人はコーヒーをがぶ飲みし、仮に紅茶をいれるとしても電子レンジを使う野蛮人と考えられている。

 「私たちに『塩』なんてこと言わないで……」とエチケットのガイド本のデブレッツ社はX(旧ツイッター)に書いた。

 在ロンドン米国大使館は、「イギリスの国民的飲料に塩を加えるという思いも寄らない考えは、アメリカの公式な方針ではないことを、イギリスの善良な人々にお知らせします」とソーシャルメディアに投稿し、この起きつつある騒動に介入した。

 「私たちは深い団結力で結束し、紅茶のことに関しては私たちは一つであることを世界に示しましょう」と皮肉めいた調子で書かれている。 「米国大使館はこれからも適切な方法で紅茶を作り続けます。電子レンジでチンして」

 大使館は後に、この声明は公式のプレスリリースではなく、「私たちが共有する文化的なつながりを軽妙に表現したもの」と明らかにした。

 一方、出版社のほうは、フランクル氏の本は本当のことを言っているとする。3年にわたる研究と実験の成果であるこの本は、紅茶に含まれる100種類以上の化学化合物を調査し、「よりおいしい一杯をいれるためのアドバイスとして、化学的な知識を活用している」と述べている。

 フランクル氏は、少量の塩(味を感じるほどではない)を加えると、「塩に含まれるナトリウムイオンが口の中の苦味受容体をブロックする」ため、紅茶の苦みが軽減されると述べる。

 フランクル氏はまた、あらかじめ温めておいたポットで紅茶をいれ、ティーバッグを少しの間、激しくかき回し、保温のために浅いがっしりしたマグカップで提供することを推奨している。さらに、ミルクは紅茶を入れる前ではなく、入れた後に入れるべきだとしており、これも紅茶愛好家の間で意見が分かれがちな問題だ。

 フランクル氏はイギリスでの自分の本に対する反応の大きさに驚いている。

 「うまくいけば、多くの関心が寄せられるだろうと、なんとなく考えていました」とフランクル氏はAP通信に語った。「でも、アメリカ大使館を巻き込む外交問題にまで発展するとは思いませんでした」

 アメリカとイギリスを隔てる、海のように広いコーヒーと紅茶の溝について、フランクル氏は考えさせられた。

 「私たちは単にカフェインの多い社会ということなのでしょうか。コーヒーのほうがカフェインを多く含んでいます」 と彼女は言う。「あるいは、私たちはただ母国に反抗しようとしているだけなのかもしれません」

By JILL LAWLESS Associated Press

Text by AP