ライブに別れを告げたKISS、アバター化し活動継続 音楽業界で広がるバーチャル化

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 12月2日夜、ニューヨーク市の有名なライブ会場、マディソン・スクエア・ガーデンで、アメリカの人気ロックバンド「KISS(キッス)」が最後のツアーとなる「エンド・オブ・ザ・ロード」の最終公演を終えた。

 しかし、熱心なファンなら誰もが知っている通り、キッスは決してこれで活動を終了するとは言おうとしなかった。そして本当に、終わりを迎えることはないのだ。

 アンコールの途中、キッスの現メンバー(創始者のポール・スタンレーとジーン・シモンズ、そしてギターのトミー・セイヤー氏とドラムのエリック・シンガー)がステージを離れ、それぞれのデジタルアバターを発表。こうして引き継ぎが終わると、バーチャルのキッスが「ゴッド・ゲイヴ・ロックンロール・トゥー・ユー」を演奏し始めた。

 ロックバンド、キッスの新たな章の幕開けにあたり、最新鋭のテクノロジーが採用された。キッスとして50年におよぶ活動を終えたバンドは今、デジタル世界における不死といったものに関心を寄せている。

 アバターは、ジョージ・ルーカスの特殊効果を手がける会社、インダストリアル・ライト・アンド・マジックがポップハウス・エンターテインメント・グループと手を組み制作した。ポップハウス・エンターテインメントは、アバのビョルン・ウルヴァースが創業者の一人となっている。この2社は最近、ロンドンで行われた「アバ・ヴォヤージ」でもタッグを組んでいる。同公演はスウェーデン出身のバンド、アバのフルライブを楽しめるが、演奏するのはデジタルアバターというものだ。

 ポップハウス・エンターテインメントのCEO、パー・スンディン氏によると、この新たなテクノロジーがあればキッスはそのレガシーを「永遠」に持続できるという。また、バーチャルで演奏が行われている間キッスがステージ上にいなかった理由について、この未来探求型テクノロジーでは「そこが重要な点」だからだとした上で「キッスは、一晩のうちに三大陸の三都市でコンサートができます。それこそが、このテクノロジーにより叶えられるものです」と述べている。

 バンドがスーパーヒーローに変身したかのように描かれたデジタルアバターを作る際には、キッスがモーションキャプチャースーツを着用して演奏した。

 音楽業界の一部では、この種のテクノロジーを用いた試みが次第に広がってきている。K-POPスターのマーク・トゥアンは10月、ソウル・マシーンズと提携し、自律的かつ自動化された「デジタル・マーク」という名の「デジタルツイン」を作成。その際、セレブとしては初めてオープンAIのGPT統合サービスに自身の肖像を取り込ませた。この人工知能テクノロジーにより、ファンはトゥアンのアバターと一対一でやり取りができる。

 K-POPガールズグループのエスパは、彼女らのデジタルアバターと一緒にパフォーマンスをすることが多々ある。同グループは4人組だが、デジタルツインズと合わせた8人組として見てもらいたいとしている。ほかにも、ガールズグループのエターニティは、完全にバーチャルキャラクターのみで構成されており、人間のメンバーは必要としていない。

 キッスのフロントマンを務めるポール・スタンレーはインタビューのなかで「私たちが成し遂げてきたものはとてつもないが、十分ではありません。あのバンドは、私たちよりもさらにビッグなので、生き続けるにふさわしい。次のステップへと進み、キッスが不死の存在となるなんて、楽しみでなりません。我々自身を夢にも見たことがないところへと送り出すことで、永遠に若く、アイコニックな存在でいられるようになるのです。このテクノロジーがあれば、ポールもかつてないほど高いジャンプを見せてくれるでしょう」と述べている。

 マディソン・スクエア・ガーデンでの公演に参加できなかった方々も、これからに期待してほしい。キッスのアバターコンサートに向け、着々と準備が進められているようだ。

By MARIA SHERMAN AP Music Writer
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP