「泥沼化」したバーニングマンにみる気候変動のサバイバル 6万4千人が足止め

9月4日のバーニングマンの会場の様子|Stringr via AP

◆「泥沼化」したバーニングマン
 今年のバーニングマンは8月27日から9月4日まで開催。通常は水不足ぐらいの砂漠地帯だがイベント開催の週末、地域は大雨に見舞われたため、一帯が泥沼状態になった。この天候の状況を受け、主催者側はブラック・ロック・シティから出るためのゲートを封鎖。参加者はRV車やテントなどにとどまって過ごすしかない状況であった。一方で、開催者は参加者に対して逐一状況の発信を行っていたようだ。9月4日月曜日の午後にゲートが開き、参加者は泥が残る場所からの移動を開始した。同日正午の時点では約6万4千人の参加者がブラック・ロック・シティで足止めされていたという状況だ(当初の参加者は約7万2千人)。主催者からの最後のアップデートは9月6日。当初の会期終了から2日たった後も、まだ参加者の「脱出」が続いていた。

 ガーディアンは泥の中、脱出しようとしていた人々の様子を伝えている。車で動こうとしても、泥にハマって立ち往生してしまうという状況だったようだ。一方で、バーニングマンの自立の精神を継続させ、ブラック・ロック・シティに残ってパーティーを楽しもうという前向きな考えの人々もいたようだ。CNNの記事は、芸能人が泥まみれのブラック・ロック・シティを何キロも歩いて移動し、最終的にはほかの参加者の車に乗せてもらったというエピソードを伝えている。

 バーニングマンは、物々交換が主な経済手段となるユートピア的なコミュニティで、快楽主義者や金持ちが集まってパーティーをする場所であるとワイアードは説明する。キャンプのようなサバイバルモードでさまざまな天候に合わせた準備をして参加する人もいるが、お金をかけて発電機や仮設トイレをはじめとする「快適」な設備を利用することを前提とする人もいる。

 今回のバーニングマンでは気候変動の影響が、思わぬ形で顕在化した。この出来事は皮肉なことである。お金をかけて快適さを手に入れ、自分たちだけの場所で好きなように楽しむというライフスタイルが、気候変動による異常気象という誰もが避けられない課題によって遮断された。バーニングマンはラディカルな精神を持ったイベントだからこそ、気候変動に対してももっとラディカルな働きかけが必要になるのではないだろうか。バーニングマンならではのクリエイティビティとレジリエンスの精神が求められる。

Text by MAKI NAKATA