『静かな贅沢』…超富裕層の「地味」ファッションが一大トレンドに

© 2023 Warner Bros. Discovery, Inc.

◆ドラマやセレブが影響 「差別化するファッション」とは
 『静かな贅沢』のトレンド化には、米ケーブルテレビ局HBOのドラマ『メディア王~華麗なる一族~』が一役買ったとされている。登場する億万長者のキャラクターたちは、ブランドもロゴも見えない超高級品を身に着けており、富裕層のさりげない着こなしが、3月の最終シーズンを迎えると筋書きと同じぐらい話題になった。

 また、スキー事故の裁判期間中に、高級ブランドの地味で控えめながらも贅沢な衣類を身に着けていた、女優のグウィネス・パルトローのファッションも注目を浴びた。

パルトローの裁判でのファッション。プラダなど高級ブランドのものだった

 ラグジュアリー・ファッションを研究するニューヨーク大学のトメイ・セルダリ教授によれば、『静かな贅沢』と呼ばれるファッションの特徴は、落ち着いた色調の高価な素材を使用していることだという。ラグジュアリー・ブランドは、素材の品質にこだわり、商品をよく知った人にしかわからない、細部にまで及ぶ独特の技術を持っている。つまり、その「知る人ぞ知る」という部分が差別化要因になっている。(CNBC

◆庶民にはハードルが高い? お手本はあの人!
 現時点で、TikTokでの『quiet luxury』と『stealth wealth』の検索数はそれぞれ400億回、6億回を超えている。長年派手なファッションを取り込んできたセレブたちも、ベーシックで控えめなファッションに転じている(リファイナリー29)。

 もっとも、一般の消費者が『静かな贅沢』と言われる高額商品を買うかといえば、そうはならないとセルダリ氏はみる。このインフレが続くご時世では、ニュートラルで地味な商品を買って、見た目を再現することになるだろうとしている。(CNBC)

 数々の流行語を生み出したコンサルタントのショーン・モナハン氏は、コロナ禍でできなかったおしゃれをしたいという需要があると指摘し、成熟した大人のファッションへの憧れが、古いスタイルの着こなしへの関心につながっていると述べる。ただ、超富裕層のスタイルはわずかな対価で手に入る物ではないため、アイテムを絞って購入し長く使うことを勧めている。お手本は、いつも同じ服を着ているイギリスのチャールズ国王だそうだ。国王の穴の開いた靴下は『ステルス・ウェルス』の象徴として雑誌にも取り上げられており、持続可能性の面でも合格ということらしい。(BBC)

Text by 山川 真智子