松本零士を悼むフランス「アルバトールの父逝く」 新聞一面にも

Domenico Stinellis / AP Photo

◆飛行技術をフランスに学んだ父親
 訃報に接し、いち早くツイートで追悼の意を表した在日フランス大使館は、これらの事実に加え、松本零士の父親から続くフランスとの関係に言及している。松本零士の父親は、フランス航空教育団に飛行技術を学んだパイロットだったのだ。フランス航空教育団とは、フォール大佐率いる63人の専門家で、1919~1920年に日本に派遣されてきた。当時、フランスから航空機を購入した日本に、飛行技術のほか整備や組み立ての指導を行うことを目的としていた。

 航空教育団派遣から100年目にあたる2019年に記念行事が催された際には、松本零士自身がインタビューに応え、父親の影響で自分も大空に憧れパイロットになりたいと願っていたこと、だが中学生のころ近眼になって断念し、最終的にその夢を絵に描くことを選んだこと、同じく空に憧れた実弟は作る側に回り、ロケットや飛行機の設計を仕事としたことなどを語っている。

◆日本の新聞より詳しい? 追悼記事
 フランス最大の日刊紙ル・モンド紙は20日、松本零士の生い立ちから、少女漫画に始まったキャリアの変遷、作風と理念まで詳しく解説する記事を掲載した。そこには、松本零士の描く細身の女性のシルエットが、ティーンエイジャーのころ観た仏独映画『わが青春のマリアンヌ』の女優マリアンヌ・ホルトの影響を受けていること、フランスのBD(ベーデー)作家ジャン・クロード・メジエールやジャン・クロード・フォレストにもインスピレーションを受けていることなどが指摘されていて興味深い。

 いずれにせよ、アルバトールの父の死に無関心でいられないフランス人は相当数いるということであろう。

Text by 冠ゆき