公平性に懸念…トランス女性の女子競技参加をどうするべきか 全米に議論広がる
◆男性の生物学的優位性には勝てない… 競技を諦める女性も
批判が強まるなか、非営利団体のカナダスポーツ倫理センター(Canadian Centre for Ethics in Sport:CCES)の委託を受けて出された報告書は、トップ選手が集まる大会へのトランス女性の参加は不公平ではないと結論づけた。
報告書は、テストステロン抑制を受けたトランス女性が、シス女性よりも明確な生物学的優位性を持つとは言えない証拠があると主張。シス女性の脅威はトランス女性ではなく、むしろ資金、リーダーシップ、参加の機会などにおける男女間の不平等であり女性嫌悪だとし、社会的要因はテストステロンよりもずっと影響が大きいとしている。
この意見に反論する学者たちの論文も出されている。論文を執筆した学者たちは、そもそも男性の優位性が認められているからこそ、女子競技が存在するのだと指摘。完全に男性の優位性が取り除けないなら、トランス女性の女子競技参加は不公平ではないかとしている。
さらに、トランス女性を一律に女性カテゴリーに含めることで、シス女性が表彰台に上がれなくなったり、希少な奨学金や賞のチャンスを失ったりすることになると指摘。女性はすでにさまざまな理由でスポーツから自ら距離を置いており、トランス女性と競うことがわかっていれば、この傾向は続くだろうとしている。
現在さまざまな競技団体がトランス女性の女子競技参加を認める方向に動いている。サーフィンもその一つだが、プロサーファーのベサニー・ハミルトンは、トランス女性と競うことに懸念を表明している。トランス女性の参加が認められるのなら自分は大会にでないだろうと発言。トランス女性選手のために別の部門を作るのが解決策だとした。(ナショナル・ポスト紙)
◆トップ選手からほぼ最下位へ トランス男性には批判の声聞かれず
一方、トランス男性の男子競技への参加はほぼ問題視されていない。イェール大学のアイザック・へニッグ選手は女子として競泳に出場し、アイビー・リーグのタイトルを獲得し、全米選抜に選ばれるなどの活躍を見せていた。しかし男子競泳に転向した後の昨年11月は、83人中79位と最下位に近い成績となっている。本人は、ゴールは男性として勝つことではなく、自分らしく生きることだと満足そうだ。(フォックス・ニュース)
トーマス選手も、女子競泳への転向は有利だからではなく、自分らしく生きたかったからとESPNのインタビューで語っている。また、スポーツ界においてトランス女性は少数派であり、シス女性の脅威とはならないと主張した。もっとも、男性として泳いでいた2018-2019年シーズンのトーマス選手のランキングは、200ヤード自由形で554位、500ヤードで65位だったが、女子として出場した2021-2022年シーズンはそれぞれ5位、1位にまで上昇。へニッグ選手とは逆の結果となっている。
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