革新的レコード会社ODRADEKと100年のピアノ職人技 イタリア・ペスカーラが音楽の震源地に?!

ODRADEK社録音スタジオ兼ミニコンサートホール

◆約100年を経ても君臨し続けるファッブリーニの匠の技
 実はペスカーラには、元々巨匠ピアニストにはなくてはならない物があるのだ。イタリアが誇るピアノ製作会社のファッブリーニである。顧客には内田光子、マルタ・アルゲリッチ、グリゴリー・ソコロフ、ダニエル・バレンボイム、アンドラーシュ・シフ、クリスティアン・ツィメルマン、エフゲニー・キーシンなど錚々たる顔ぶれが連なり、マウリツィオ・ポリーニなど、どこへ行くにもファッブリーニ社長を同伴するという。その匠の技もペスカーラの誇りだ。半盲のイタリア国民的歌手アンドレア・ボチェッリもこの街の出身で、ふらっとヘリコプターで訪れ、グランドピアノを吟味して買って帰ったと新聞ネタになったりもする。

 ODRADEKのアンダーソン社長はメッツェーナ先生自身がスタンウェイを買ったファッブリーニ社を勧められ、初めは練習用ピアノを、数年後にはスタンウエイBモデルを、そして2017年のスタジオ新築にあたり、より大きいDモデル ファッブリーニ・コレクションに買い替えた。その迫力を最大限に発揮したポルトガル人ピアニスト、アルトゥール・ピサロは6月11日に催されたODRADEK創立10周年記念に華を添えた。その様子は下の動画にて視聴できる。

創立10周年を迎えて、ロゴも新たに記念イベントが6月11日に催された

 また、その10周年記念イベントでは、ワーナー・クラシックからの依頼でVIST.CO社と共同制作した、現在アメリカ人メゾソプラノのトップに君臨するジョイス・ディドナートの新譜『エデン』のプロモーションビデオも流れた。次はドイツ人の世界的ソプラノ歌手、ディアナ・ダムラウとの収録が予定されているという勢いだ。

パネルディスカッションでの様子。左からナポリターノ、司会者、アンダーソン

Text by 中 東生