男優賞・女優賞廃止 ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントンも称賛

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 ベネチア国際映画祭に出席したトップ俳優のケイト・ブランシェットとティルダ・スウィントンは、ベルリン国際映画祭が「男優賞」と「女優賞」を廃止したことを称賛した。ティルダは、今後はほかの映画賞もこれにならうだろう、と予測している。

 8月末、ベルリン国際映画祭の主催者は来年度から男女別の俳優賞を廃止すると発表した。これまで、同映画祭の最優秀賞にあたる銀熊賞に設けられていた「男優賞」と「女優賞」の代わりに、「最優秀主演賞」と「最優秀助演賞」が導入される。

 ベネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞したティルダ・スウィントンはオープニングセレモニーで、性別によって賞を分けることは「人生の無駄」としたうえで、記者団に対し、「ベルリン映画祭の件は非常に嬉しい。あらゆる人がこの動きに続いていくことは必然だと思います。私には明白です」と語っている。

 今年度ベネチア国際映画祭の審査員長を務めたケイト・ブランシェットは、自身を無意識に女優ではなく「俳優」と呼んでいるという。他人の仕事を批評するだけでも十分難しく、それを性別で分けることはさらに難しい、とケイトは話す。

「私の世代は、“女優”という言葉が常に軽蔑的なニュアンスで使われてきました。だからこそ、そうでない空間を主張しているのだと思います。良いパフォーマンスとは、それを生み出す演者の性的指向にかかわらず、良いパフォーマンスなのだと思います」とケイトは語る。

 ベネチア国際映画祭はこれまでも、コンペティション部門の作品に女性監督が不足していると長らく批判されてきた。2017年から2019年にかけて最高賞である金獅子賞候補となった62作品のうち、女性が監督した映画はわずか4本だった。

 今年は男女の偏りが改善され、コンペに参加した映画の44%が女性監督によるものだ。

 金獅子賞候補の映画『Lovers(ラヴァーズ)』を監督したフランスのニコール・ガルシアは、自身や仲間の女性監督が性別の割り当て要因としてではなく、功績を認められて映画祭に参加することを望んでいる。

「監督というのは男性や女性、子供や老人などあらゆる人に集中し、注目するもので、自分の性別にあらがう必要はありません。一方で俳優は、男性もしくは女性であり、自身の役に縛られます。でも監督は、単に監督です。性別は関係ありません」記者団に対して3日、ニコールはそのように語っている。

 また、映画祭で女性監督を増やそうとすることは、実は「反フェミニスト」だったとニコールは言う。

『Lovers』の主人公、リサ(演:ステイシー・マーティン)は麻薬取引にかかわる恋人を愛しつつ、取引に失敗した彼が逃亡後、裕福なデベロッパーと結婚する。その2人が再び出会ったとき、映画に暗雲が立ち込める。

 ティルダ・スウィントンは、ペドロ・アルモドバル監督の短編映画『The Human Voice(ザ・ヒューマン・ヴォイス)』に出演し、ベネチアに登場した。この映画では電話で恋人に別れを告げられた女性の心境が描かれている。

By NICOLE WINFIELD Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP