『パラサイト』ポン・ジュノ監督、オスカー受賞の喜び語る 米でドラマ化も
オスカー受賞作『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督は2月19日、現代社会の残酷な貧富の差をありのままに描いた同作について、つらい場面もあるにもかかわらず、このような栄光を手にできたことは「最も嬉しく、最も意義深いこと」だと喜びをあらわにした。
韓国社会の最上層と最下層に生きる2組の家族を描いたポン監督のコメディスリラーは、画期的な映画作品となった。同作は2月に行われた第92回アカデミー賞授賞式で、外国語作品としては初めて、最も栄誉ある作品賞を受賞した。ポン監督と同氏の作品は、ほかにも3部門でオスカーに輝いた。
同作のストーリーについて、ポン監督は取材陣に対し、「笑えるコメディ」の要素だけではなく、現代社会における持てる者と持たざる者の格差という「残酷で悲惨な側面」も持ち合わせていると語る。
「そのような場面から決して目を背けたくありませんでした。観る人は嫌悪や不快感を覚えることもあるでしょう……しかし売上的にはリスキーであろうと、この作品では私たちが生きる世界を、可能な限りリアルに描写するのみだと思いました」
ポン監督は、『パラサイト』がオスカーを受賞する前から、北アメリカ、フランス、ベトナム、日本、イギリス、そして同氏の故郷である韓国で、大きな興行収入をあげていたと指摘した上で、「受賞にかかわらず、現代を生きる世界中の人々がこの作品に反応を示してくれたことが最も嬉しく、最も意義深いことでした」と述べている。
格差を風刺した同作品では、スラム街の地下アパートに住み、職もない4人の貧しい家族が、高級マンションに暮らす裕福な家庭に潜り込む様子をコミカルに描いているが、その後、事態は暴力的かつ悲惨な展開を見せる。
ポン監督が2013年に発表したSF映画『スノーピアサー』は、『パラサイト』にも出演した韓国人俳優のソン・ガンホ氏とともに、クリス・エヴァンス氏、ティルダ・スウィントン氏を主演に迎えた作品で、好調な売上を記録し、きわめて大きな成功を収めた。しかし過去のいかなる作品も、韓国語で撮影された純韓国映画である『パラサイト』の成功に比べれば、遠く及ばない。
ポン監督は作品賞のほかに監督賞も受賞。さらに『パラサイト』の脚本を共同で執筆したハン・チンウォン氏とともに、オリジナル脚本賞に選ばれた。同作はまた、国際長編映画賞も受賞した。
『パラサイト』が韓国映画として初めてオスカーを獲得したことで、同国ではポン監督が英雄的存在となっている。4月に国会議員総選挙を控える韓国では、ポン監督の像の設立や、監督にちなんだ名前の通りの整備、監督の生家の再建を提案する議員もいる。
このような提案について問われた監督は、「そういうことは、私が死んでから検討して欲しいところです」とジョークで返した。
ポン監督は、作品の商業的な魅力については、評論家やジャーナリスト、ファンに判断してもらうとして、自身は次回作の制作に集中したいとしている。
『パラサイト』で裕福な家庭で働く住み込みの家政婦を演じたイ・ジョンウン氏は記者会見で、同作品は「失業などの世界共通の問題を、コミカルかつ緻密に描いている」とコメントしている。また、ハン・チンウォン氏は、「10人の登場人物はそれぞれが独自のドラマと生きる理由を持っているので、共感できる人も多いはずだ」と述べている。
ポン監督は、オスカーで結果を残せたものの、多忙をきわめたため休暇をとる予定だとしている。しかしアメリカの有名映画監督、マーティン・スコセッシ氏から早々の復帰を求められたという。
「ほんの数時間前に手紙を読んだばかりですが、光栄なことです。スコセッシ監督は、私の業績を褒め、休むべきだとしながらも、監督を含む誰もが次回作を待望しているのだから、休暇は短めにと言ってくれました」
ポン監督は監督賞を受け取る際、スコセッシ氏を称賛するコメントをしており、観客から予定外のスタンディングオベーションを浴びた。
また、テレビ版『パラサイト』の制作について、HBOと話し合いを進めていることを明かし、5~6話の連続ドラマの脚本家として、アメリカ人監督で脚本家のアダム・マッケイ氏の合意が得られたとしている。マーク・ラファロ氏とティルダ・スウィントン氏がキャストに決定したという報道は否定した一方で、HBOとの最初の話し合いはスムーズに進んだという。
「テレビ版『スノーピアサー』は5月に放送予定ですが、打ち合わせを始めたのは2014年か2015年頃ですから、5年ほどかかったことになります。(テレビ版の)『パラサイト』にもまた、相当な期間が必要となるでしょう」と、監督は言う。
By HYUNG-JIN KIM and KIM TONG-HYUNG Associated Press
Translated by t.sato via Conyac