英紙は『もののけ姫』、英映画誌は『トトロ』……海外メディアがジブリ作品をランク付け
♦︎社会的メッセージがポイントか
本ランキングはガーディアン紙が独自に編集したものであり、必ずしも各作品の国内での知名度や評価とは一致しない点が興味深い。同紙のコメントから作品への評価を確認すると、1位『もののけ』は「今日の気候変動を強く訴えかける」とのことで、人間と自然の相反する利害をテーマにした作品性が高く評価された。2位『ハウル』は、呪いで老いてしまった少女・ソフィが美青年の魔法使い・ハウルと奇妙な動く城で共同生活を送るが、戦火に巻き込まれたハウルは徐々に弱ってゆくというストーリーだ。難解だと言われる本作に対し記事は、「これは明らかに、イラクにおける衝突に対する、映画を通じた宮崎(監督)の反応」だと解釈している。3位『魔女宅』は角野栄子氏による児童文学を映画化したもので、13歳の少女・キキが見知らぬ街で魔女の修行に励み、挫折と孤独を乗り越えてゆく。記事は「冒険心にあふれた若き女性を描く、元気いっぱいの映画作品」と評価しており、社会における女性の活躍を評価しているようにも受け取れる。現代社会で注目されるメッセージをはらんだ作品が上位に選定されているようだ。
当然ながら何を上位とするかには個人個人の捉え方があり、記事には実に800件を超えるコメントが寄せられている。ある読者は『千と千尋の神隠し』『魔女』『ポニョ』『トトロ』『ラピュタ』『ナウシカ』を優劣つけ難いトップ集団だと主張しており、これは63票と多数の賛同を集めている。国内で酷評を受け原作者も失望したとされる『ゲド戦記』(記事によるランキングでは8位)を下位にするべきだとも述べており、このあたりは平均的な国内の評価とも一致しているように見受けられる。ほかのコメントとしては、「ほぼすべてのスタジオジブリ映画は素晴らしく、最も魅力のないものでさえ何らかの輝く点がある」とする意見が145票と多くの賛成票を集めている。何をトップに据えるかには個人の好みがあれど、どの作品も期待値を上回るという点では意見がおおむね一致しているようだ。
♦︎他誌も独自ランキングを選定
Netflixでの配信開始を受けて、ほかにも多くのメディアが独自のランキングを公表している。エンパイア誌(1月29日)はスタジオジブリを「史上最もスリリングで、しびれるほど美しく、非常に魅力的な映画」に数えられる複数の作品を生み出してきたアニメーション・スタジオだと紹介している。愛くるしい生き物に目を奪われる『トトロ』、人と自然の共生の難しさを問う『もののけ』、切なさにひたる『火垂るの墓』を上位に挙げている。
スクリーン・ラント誌(2月1日)は『千と千尋』『もののけ』を推しているが、3位に『かぐや姫の物語』を挙げた点がユニークだ。高畑監督による本作は、和紙に墨で主線を引いたような独特のタッチが目を引く。「胸を打つほど美しく繊細なこの映画は、伝統的な芸術作品と水彩画から美術のスタイルに影響を受け、目がくらむほど魅力的ななにかを生み出している」と述べており、日本らしさを感じさせる点が高く評価された。
スタジオジブリをめぐっては2月4日、愛知県に2022年開業予定のテーマパークの内容が発表されるなど話題が尽きない。すでに開業から18年が経つ東京・三鷹のジブリ美術館も国内外のファンに根強い人気があり、日付・時間指定制のチケットが1ヶ月先までほぼ完売するほどの盛況だ。スタジオが生み出した独創的な作品群は、これからも世界の人々を魅了し続けることだろう。
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