日本語が世界に与える新たな価値観

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◆書籍に対する反響
 今年1月に出版されたこの本は、発売以降多くの英語圏に住む読者の手に取られ、日本特有の文化的価値観を届けた。ネット上では、読者がそれぞれの心にとくに響いたフレーズを多くシェアしている。

 ジャーナリストのアニャ・マイヤーウィッツ氏は本書内で紹介された茶道の心得を示す標語「和敬清寂」を「一瞬の静けさに見つける喜びの言葉」として取り上げ、「私はこの言葉の意味を知ったとき、そのシンプルな美しさに驚かされた。私たちという存在を世界のさざ波にただ浮かばせ心静かに生きるという概念は、我々に力を与える」とコメントしている(英サイト『Red』)。

◆43の日本語に込められた著者の想い
 本書を取り上げたBBCの取材にて著者の藤本氏は「欧米では完璧さを追求する傾向が強い。できる限りの努力をし、ほかの人々の期待に応えなければないと絶えず感じている」とコメント、この理由を「西洋的な価値観では醜さや不完全さは不快なものとして見なされる」と解説し「ところが日本の伝統的な美学は自然のすべてが移ろい、不変なものや完璧なものなど何もないという厳然たる自然の心理に基づいている」として本書を通じ日本の伝統的な価値観を欧米圏に届ける意義を語った。また、他文化を通じて既存のライフスタイルを見直すことの重要性について次のように答えた。「ギアを変えるだけで、世界の美しさがもっと見えてくる。考え方や観点を少し変えるだけでいい。私たちのまわりには、私たち自身が気づいていない、あるいは良さを分わかっていない素晴らしいものが、実にたくさんあるのだから」

 本書に紹介されるような「不完全さ」を美徳とする精神性に基づく日本の文化は、欧米圏に新たな価値観として今後さらに受容されていくのではないだろうか。

Text by 菅原史稀