あなたは読めないが、100年後の人々は読める本

スコットランド人アーティストのケイティー・パターソン(左側)の100年かけたプロジェクトである未来の図書館のために、原稿を渡す作家のマーガレット・アトウッド(右側)。提供:ケイティー・パターソン

著:Public Radio International この記事とラジオ音声はスザンナ・ロバーソンにより「ザ・ワールド」向けに発表され、2015年7月16日にPRI.orgのサイトで公開されたものです。コンテンツ共有の合意のもとグローバル・ボイスに転載しています。

 タイムカプセルの話は皆聞いたことがあると思うが、これはそれとは少し違う。未来の図書館と呼ばれるもので、今はノルウェーの森として存在している。

 その図書館の仕組みはこうだ。オスロの近郊のNordmarkaという森では、今まで1,000本の樹木が植えられてきた。その樹木は今から100年後に印刷される特別なアンソロジー(文学選集)のための紙として使われるのだ。このプロジェクトはスコットランド人のアーティスト、ケーティー・パターソンが落書きの最中に思いついたのだという。

 「ごく簡単な年輪のスケッチをノートに書いていた時に、突然年輪と本の章との間の関連性に気がついたんです。」とパターソンは言う。

パターソンは100年かけて毎年一人ずつ作家に声をかけ、作品の収集に力を貸してもらうことを計画した。そして最初の一人として、今年の5月、カナダの受賞作家、マーガレット・アトウッドが原稿を提出した。

 「私を含め、他の誰もが未来のその時まで読むことのできない彼女の作品を手に取った時は、強い誘惑にかられました。」とパターソンは言う。「でも、もちろん絶対に本を開いたりはしませんよ。」

 パターソンは、そのプロジェクトが未来の世代への贈り物になることを願っている。それは、まるで未発見の古い原稿を読むような気持ちになるだろうと彼女は考えている。

 「2015年であろうと2025年であろうと、作品がそれぞれの年を結晶化していくのが目に浮かびます。」とパターソンは語る。「最初の読者が1ページ目を開く時のわくわく感を想像するのも楽しいですね。」

 しかし2114年までその時は来ない。一方、パターソンは、プロジェクトの2番目の作家、イギリスのデヴィット・ミッチェルを公表した。

 そしてノルウェーの森は今も育ち続けている。


This article was originally published on Global Voices(日本語). Read the original article.
Translated by Miyuki Wood.
Proofreading:Moegi Tanaka.

Text by Global Voices