グッチやプラダも……なぜファッションブランドへの「人種差別」批判が起きているのか

AP Photo / Antonio Calanni

 このような出来事の多くがソーシャルメディア上での批判を即座に受けている一方で、長期的な影響をはかるには時間がかかる。そして、その影響はブランドの対応力や未来についての感じ方によって度合いが異なる。

 ドルチェ&ガッバーナは、差別的な発言が公開された後、上海で予定していたファッションショーの中止を余儀なくされた。アジアで最も影響力のある著名人らがショーへの参加を見送ると表明し、そして中国のウェブサイトは一斉に「全世界の売上の30%を占める市場からの警告である」と報じた。

 ブラックフェイスのパフォーマンスがアメリカ国内でとりわけ多くの反響を呼んだのは、バージニア州知事と同州司法長官が、1980年代の学生時代に「ブラックフェイスをしたことがある」と認めたことが、スキャンダルになったためである。この差別的な描写は、19世紀より各地を巡業していたミンストレル芸人に端を発する。この芸人が行う「ミンストレル・ショー」とは、滑稽で嘲るような姿を装い、アフリカ人の特徴を演じるため顔を黒く塗るものである。そして、その描写によって、これまで人種的固定概念が拡大されてきた。

 イタリア、ローマのルイス大学の社会学者であるミケーレ・ソリーチェ氏は、イタリアのファッションブランドが表現したブラックフェイスは、「善意と無知が交錯するもの」を示唆していると述べる。イタリアの社会では、人種差別だと取られかねない言葉や描写についての認識が十分でないと指摘する。

「このことが人種差別に繋がるものだとは考えてもいないと推測します。これらの描写が、黒人であるという概念を際立たせ、滑稽に見せるために典型的に使用されてきたものであると理解する術を持ち合わせてはいないでしょう。多くの人が、単純に知らないのです。文化的な問題です」と、ソリーチェ氏は述べる。

 ミラノにあるボッコーニ大学でマーケティング学の教授を務めるパオラ・チッロ氏は、デザイナーの意図することが異なった解釈のもとで誇張された可能性もあると話す。そして、事態を収束するために迅速な対応を行ったグッチを評価すると述べる。

 映画製作や絵画制作、音楽創作などの芸術的探究と、ファッションデザイナーが行う製作過程を比較して、「ファッションを批判するつもりはありません」と、チッロ教授は述べる。「文化的な世界には、もっと斬新なことをしてきたアーティストたちがいますが、誰からも何も言われません。ファッションは短命で、商業的なものだという考え方がありますが、私はそのように考えていません。ファッションは、他のあらゆる芸術同様、その時代を反映するものです」

 グッチがアレッサンドロ・ミケーレ氏のもとでジェンダーにこだわらない装いを追求してきたように、ファッション業界はこれまで、先頭に立って性規範について取り組んできた。しかし一方で、人種間の寛容さや気候変動、女性の地位向上などといった社会問題への対応については、他の業界に遅れをとってきた。アメリカのペース大学でマーケティング学教授を務めるラリー・チアゴリー氏はこのように語る。

「今の状況の背景となる理由について明確な答えはないが、ファッション業界が社会に追いつく必要に迫られていることは、一連の出来事によってはっきりと示された」

By COLLEEN BARRY, AP Fashion Writer
Translated by Mana Ishizuki

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Text by AP