グッチやプラダも……なぜファッションブランドへの「人種差別」批判が起きているのか

AP Photo / Antonio Calanni

 高級ファッションは、斬新で創造性にあふれるもの、また最先端の流行を象徴するものであり、そこから発信される情報は消費者を惹きつけてやまない。しかし、世界トップクラスのブランドが相次いで人種差別的なニュアンスを含むデザインを発表し、人々を驚かせた。

 イタリアのファッションブランド、グッチが販売した黒のニット製品「バラクラバ ジャンパー」が、最近の事例として挙げられる。鼻までカバーするデザインの襟元には口の部分に切り込みが入っており、大きな赤い唇に見えるような縁取りが施されている。ブラックフェイス(訳注:黒人以外の演者が黒人を演じるために施す舞台メイク)をイメージさせるとの批判が即座に寄せられ、2月6日、グッチは謝罪声明を発表した。

 さらに、ファッションブランド以外でも同様の騒動が持ち上がった。アディダスは2月7日、黒人歴史月間を記念したコレクションからランニングシューズを除外すると発表し、謝罪した。ハーレム・ルネサンスに刺激を受けたとアディダスは見解を示したが、真っ白なスニーカーがコレクションに含まれていたことがソーシャルメディア上で非難の対象となった。

 グッチもまた、問題となったセーターをオンラインと店舗から回収し、今回の出来事を「組織全体の大きな教訓」とすると表明した。

 しかし、依然として疑問が残る。一体どうして、細部へのこだわりを人気の糧としているファッションブランドが、社会に関わる重要な手がかりを見失うことができるのだろうか。

 プラダも同様に、2018年12月、ブラックフェイスを彷彿とさせる猿モチーフのバッグチャームの販売を、「人種差別的なイメージとは無関係」としながらも中止した。また、ドルチェ&ガッバーナは、中国人モデルを起用した広告動画が物議を醸し、その出来事についてチャット内で議論していたデザイナーの1人が中国人について侮辱的な発言を行ったことについて、謝罪の動画を公開した。

「かつての高級ブランドは、独創的であることや最先端にいることを建前に、社会や文化にとってきわどく、挑発的で奇抜な内容の広告を打ち出すことが可能であった」と、ウォーリック・ビジネス・スクールでマーケティング学の教授を務めるシン・ワン氏は述べる。

「しかしながら、最近起きている多くの出来事は人々の激しい憤りを引き起こしてきた。時代が変わったのか、もしくは高級ブランドが人々の心から離れてしまったのか。かつて『独創的』であると認識されたものは今や『悪趣味』、もしくは『人種差別的』とさえ呼ばれるようになってきている」と、ワン教授は述べる。

 さらに、ドルチェ&ガッバーナが2016年春夏コレクションで発表した「奴隷サンダル」や、アジアのホラー映画と比較された、春節に向けてバーバリーが公開した最近の広告など、ステレオタイプ的な概念を喚起させるような、他ファッションブランドによる過失にも言及した。

Text by AP