ポルシェのデザインは911にはじまり、911に終わる?
◆「ポルシェ=911」というイメージのデメリット
914や924など、エンジンをリアに搭載せず、911以上の年間販売実績を残した車種は少なくない。しかし「ポルシェ=911」という世間のイメージを変えるには至らず、ポルシェとして統一されたブランドイメージを確立することができなかった。
ラインナップが「911と、それ以外」と捉えられている限りは、なんらかの理由で911がラインナップから消滅した途端に、ポルシェというブランド全体が価値を失ってしまう事態に陥りかねない。そこでポルシェはデザイン戦略を大きく転換した。911以外の車種で「911とは違う」ことを主張するのではなく、ポルシェの全車種に「911を思い起こさせるスタイリングを与える」ことにしたのだ。
◆ポルシェというブランドの個性を確立せよ
世に浸透している「ポルシェ=911」というイメージをポジティブなものとするには、ラインナップが「911と、そのファミリー」と捉えられるようにすれば良い。これが現在のポルシェが推進しているデザイン戦略だ。そして結果的に、2010年から7年連続でブランド全体での販売台数を増加させるという大成功を収めている。
エンジンがどこに搭載されていようとも、またどんな車型であろうとも、911との共通性を感じることが「ああ、これも911と同じ、ポルシェなんだね」という安心感をもたらし、購買意欲を後押ししているのだろう。
SUVのカイエンでも4ドアサルーンのパナメーラでも、丸みを帯びたルーフ形状や、それに伴って上辺が強い弧を描くサイドウィンドウ形状、ボンネット面よりも高い位置にあるヘッドライトからAピラーまで伸びる峰などの要素は911譲り。他にもバンパー開口部やコンビネーションランプの形状など、細かい部分の造形テーマを共通化させるなどして、911との関連性を強く主張している。
また電動4ドアサルーンの予告として公開されたコンセプトカー、ミッションEのスタイリングを見れば、今後しばらくは現在と同じデザイン戦略を推進することは明らか。911と同じスタイリング要素を持つことが、ポルシェ車であることの証明であり、また魅力なのだ。
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