ポルシェのデザインは911にはじまり、911に終わる?

1963, Porsche Type 901, Generationen

 クルマの世界では、ブランド特有のメカニズムを個性としてアピールすることがある。これは他社による模倣を容易には許さないため、ブランドイメージの確立には有効な手段だ。しかしその一方で、時代の変化に合わせてメカニズムを刷新し、ブランドを進化させることを阻む要因となってしまう。このジレンマと長年闘い続け、勝利を収めつつあるブランド、それがポルシェだ。

◆水平対向エンジンをリアに搭載するという個性
 ポルシェの市販モデルの中で、誰もが真っ先に思い浮かべる車種はなんだろうか? おそらくほとんどのクルマ好きは、迷うことなく「911だ」と即答することだろう。1963年にデビューして以来、現在まで一貫してポルシェの基幹車種であり続けている名車だ。

 その最大の特徴は水平対向6気筒エンジンと、そのレイアウトだ。水平対向エンジンを個性とするブランドとしては、他にスバルがある。しかし現在、これをリアオーバーハングに搭載し、そのレイアウトが可能にした流線型のボディを纏っているのは911をおいて他に存在していない。

 そして911はデビュー以来モータースポーツで大活躍を続け、強烈なイメージを確立してきた。だからこそ「ポルシェといえば、スポーツカーの911」という認識となっているわけだ。しかしこれは同時に、ポルシェのビジネス展開を難しいものにしてしまってもいた。911という単独の商品としては正しい方向であっても、複数の車種でラインナップを構成するポルシェというブランドとしては、必ずしも正しい戦略とはならなかった。

Text by 古庄 速人