『ランペイジ 巨獣大乱闘』レビュー ドウェイン・ジョンソンが「大乱闘」を制す

Warner Bros. via AP

 ケヴィン・ハートやモアナなど、体の小さな共演者とペアを組むことが多いドウェイン・ジョンソンが、今回『ランペイジ/RAMPAGE』に限り小さい方の出演者として登場する。本作は絶望的につまらなく、シリアスなのだが観客に訴えてこない奇妙な怪獣映画だ。

 1986年のアーケード・ゲームをブラッド・ペイトン監督がリメイクした本作で、ジョンソンは霊長類学者のデイヴィス・オコイエを演じる。高度な訓練を受けた国際的な特殊部隊隊員の例に漏れず、当然、オコイエも軍人としての経験を過去に密かに持っているのだが、現在はサンディエゴ動物園で働いている。彼はジョージという図体のでかいアルビノのゴリラに特に時間を割いている。デイヴィスとジョージは、グータッチをしたり互いにいたずらを仕掛けたりする仲良し同士だ。

 この組み合わせは実のところ受賞間違い無しの黄金ペアなのだが、不幸なことに『ランペイジ/RAMPAGE』は我々が求めるような「ザ・ロック」ことジョンソンと猿のコンビによるコメディ(『ゲリラとゴリラ』とでも呼ぼうか?)ではない。WETAデジタルの手腕による調和の取れた特殊効果のおかげで、『ランペイジ/RAMPAGE』の映像はプロ級に思える仕上がりとなっている。私たちは『猿の惑星』シリーズの成功以来、コンピュータで生成された霊長類の仕上がりには中々うるさくなったものだ。しかし本作のジョージ(ジェイソン・ライルズがモーションキャプチャで演じた)は、数多ある猿の映画の中でも他にひけをとらない出来である。

Warner Bros. via AP

『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』でもジャングルで演じるシーンがあったジョンソンは、どんなに不完全な舞台でも並外れたカリスマ性によって観客の目を自分に惹きつけてしまう真のスターだ。もう少し力量の足りない主役だったら、『ランペイジ/RAMPAGE』も失敗に終わっていただろう。しかしスーパーマンが弾いた弾丸のように、彼は怪獣映画の典型をごちゃ混ぜに詰め込んだような設定も物ともせず弾き、霞ませたようだ。

 オリジナル版の8ビットのアーケード・ゲームでは、3体の怪獣(ゴリラ、恐竜、狼男)から一つを選び、都市を破壊して瓦礫にすることが目的だった。もちろん、このようになんともオリジナリティに富み、心に訴えかけるような話をハリウッドで映画化しようとすると、たちまち何百万ドルの小切手が切られることとなる。

 ライアン・イーグル、カールトン・キューズ、ライアン・J・コンダル、アダム・スティキエルら脚本家がこのスカスカなコンセプトから思いついたのは、手が込みすぎで、奇妙なほどユーモアに欠ける代物だった。本作は宇宙での不吉なシーンから始まる。遺伝子操作によって巨大化したラットが、宇宙ステーションの乗組員を噛み砕いてしまう。しかし時すでに遅し、地球に向けて3つのサンプルが入った脱出用ポッドはすでに発射されていた。

 製剤の入った容器は、フロリダのエバーグレーズ国立公園にいるワニ、ワイオミング州の狼、サンディエゴにいるジョージのところに着地する。それぞれ突然変異して巨大になり、同時に攻撃性を増す。(製剤がもう少し違った軌道を辿っていたら、オウム、コアラ、キース・オルバーマンといった予想外の怪物のトリオが出来上がっていたかもしれない。それこそ面白そうだ。)

 実験を行っていた会社は、密かにそれらの突然変異した動物を取り返そうと試みる。ドラマ『ビリオンズ』で好演したマリン・アッカーマンが無慈悲な長官を演じ、彼女の馬鹿な兄弟をジェイク・レイシーが演じる。一方政府と軍は共同作戦をとり、シカゴに集まってきた怪獣を捕まえるか殺すかしようとするが、失敗する。ナオミ・ハリスが遺伝子学者の役を演じる。

『ランペイジ/RAMPAGE』で唯一特筆すべきは、某国政府機関の、野性的でカウボーイのような無謀さを併せ持ったエージェントを演じたジェフリー・ディーン・モーガンである。そのシーンはデジタルによる合成だったかもしれないが、十分賞賛に値する演技だった。

『カリフォルニア・ダウン』、『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』の監督と俳優らが再び集結した本作『ランペイジ/RAMPAGE』は、それら2作品と同様にほぼ全てのシーンが何かの焼き直しに感じられ、簡単に忘れられるポップコーンのお供でしかない。そしてこの映画は面白くなければいけなかった。突然変異して巨大になった動物がシカゴ近辺に集まる映画というのは、面白いはずなのだ。モーガンは、このような怪獣映画の現場では「やるからには思いっきりやる」ことが大事と気づいているただ一人の役者のようである。

(編注)『ランペイジ 巨獣大乱闘』は5月18日から全国公開。

By JAKE COYLE, AP Film Writer
Translated by Y.Ishida

Text by AP