スターウォーズ新シリーズ成功の秘密

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著:Subimal Chatterjeeニューヨーク州立大学ビンガムトン校 Professor of Marketing)

 オリジナルの「スターウォーズ」が初めて上演されてから40年間。ここに至るまで、このシリーズはポップカルチャーに大きな影響を与え続けてきた。

 シリーズ最新作「最後のジェダイ」は、このトレンドをひきつぎ、巨大な興行収入が見込まれている

 同様に、「フォースの覚醒」(映画レビューサイト「ロッテン・トマト」で93%の好レビューを獲得)と「ローグ・ワン」(同85%)は、商業的にも批評的にも成功したスターウォーズ作品と言ってよいだろう。

 だが、すべてのスターウォーズ作品が好評を博したわけではない。今では忘れられがちだが、「ファントム・メナス」(1999年)、「クローンの攻撃」(2002年)、「シスの復讐」(2005年)など、前編三部作は当時、批評家やファンから熱烈な支持を得られなかったし、今日においてもそれほど好意的な評価は受けていない。

 ではなぜ、前編三部作は(相対的に)低評価だったのだろう? 逆になぜ、最近のシリーズがそれよりも好評を得ているのだろうか?

◆問題がないなら、変えるな
 このたび私は、「良いシリーズを作り出す要素は何か?」を解明するリサーチに関わった。その結果は、なかなか示唆に富んでいる。

 同僚と私は、「サイコ」から「X-メン」に至るまで、約100種類のシリーズ映画に対する視聴者の反応を追跡した。

 その結果、成功したシリーズ映画では、いきなり劇的な変化を作らずに、徐々に内容をアップデートしていることがわかった。これはたしかに、一般によく知られた視聴者行動とも合致する。多くの視聴者は、慣れ親しんだ要素と新しい要素の適度なバランスを求めている。もちろんオリジナル作品の単なるコピーを求めるわけではないが、最初の作品が与えてくえた印象的なおなじみのシーンをある程度は追体験したいと考えているのだ。

 この発見をふまえて、「スターウォーズ」の前編三部作を再検討してみよう。シリーズ最初の「ファントム・メナス」は16年ぶりの新しい作品として1999年にリリースされた(この少し前に、オリジナル三部作が劇場でのリバイバル上映を成功させたばかりだった)。

 ところが、オリジナルの魔法を再体験したいと願っていたファンたちは、大きく失望することになった。

 ファンに愛されたマーク・ハミル(ルーク・スカイウォーカー)、ハリソン・フォード(ハン・ソロ)、キャリー・フィッシャー(レイア姫)3人は、リーアム・ニーソン、ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマンという新顔3人に入れかわった。ジョージ・ルーカス監督は、実物のセットやミニチュアモデルを使って息を飲むような特殊効果を引き出す代わりに、コンピュータグラフィックスとデジタル効果を選んだ。さらにはスターウォーズ世界のルールにも変更があった。そこではフォースは人々を結びつける大いなる力としては描かれず、そのかわりに、「ミディ=クロリアン」と呼ばれる特殊な細胞内生物の作用として語られた(すこぶる評判の悪いジャー・ジャー・ビンクスについては、ここではあえて言及しない)。

◆古い枠の中に、新しい要素を
 これとは対照的に、最新作の「最後のジェダイ」には、多くのオリジナルキャストが出演する。マーク・ハミルとキャリー・フィッシャーが、それぞれルーク・スカイウォーカーとレイア妃を演じている。そしてそのストーリーは、オリジナル作品が有していた「ヒーローズ・ジャーニー」のプロット装置を備えている。わかりやすく言えば、「ごく平凡な人物の人生が予期せぬ急展開をとげ、ヒーローとしての役割に目覚めてゆく」という筋立てである。

 この現象は、他の映画シリーズはもちろん、映画以外の一般製品にも見られるものだ。たとえばジェームズ・ボンド・シリーズは、主演俳優はときどき変わるが、ストーリーそのものはアクションフィルムの黄金律から決して逸脱しない。また、アップル社が新たなiPhoneをリリースする際にも同様のアプローチを使っている。斬新な新モデルに飛躍する前に、直前のモデルのアップグレード版である「Sモデル」をブリッジとして必ず間に挟んでくるのだ。

 だからと言って、最近のスターウォーズ作品がまったく何も変えていないかと言えば、もちろんそうではない。新たなキャラクターも登場する。女性の主人公も増えている。けれどもそれは、とくにファンの期待を打ち砕く結果にはなっていない。

 私たちの研究では、さらにもうひとつの発見があった。シリーズに長く親しんでいる人ほどに、より大きな変化を受け入れる余地があるという事実だ。したがって、次なるスターウォーズ三部作は、この作品世界の境界をさらに押し広げ、多くの新たな惑星や、これまでのシリーズにはまだ出ていない新たなキャラクターたちを見せてくれると予想できる。

 高評価が続く近年のトレンドをうけて、おそらく製作側は、いよいよ観客がシリーズにおけるいくつかの大きな変化を受け入れる準備が整ったと見ているだろう。前編三部作のリリース当時には、その準備がまだできていなかったのだ。

 しかしながら、「フォースの力」が今後もスターウォーズの全編にわたって強く生き続けることを確実にするためには、この先に作られる未来の映画は、少なくとも部分的には、オリジナル三部作に含まれる要素をリスペクトし続けることが賢明だろう。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

Text by The Conversation