黒を着たが「語らなかった」男性たちに批判も ゴールデングローブ賞
ゴールデン・グローブの授賞式で、ほとんどの女性俳優たちが黒のドレスを着た「#WhyWeWearBlack」ムーブメントが起こったが、男性俳優の態度は様々であり、メディアによっても報道内容が違っている。
◆Time’s Up ピンを刺す男性たち
ピープル誌によれば、映画「マイティー・ソー」の主演クリス・ヘムズワース氏をはじめとした多くの男性が2018年のゴールデン・グローブの授賞式で、頭からつま先まで黒を身に着け、女性俳優を支援する意向を示した。スターたちは、映画業界におけるセクハラを撲滅する「Time’s Up」ムーブメントのために黒を着用することが奨励され、彼らはセクハラに反対する女性と連帯し、職場の不平等に関する注意を引いた。
黒を着用することに加え、ヘムズワース氏を含む男性たちは、襟元に「Time’s Up」ピンを刺していた。「これは、多くの人々が団結し、セクハラを支持していないと言っているものです」と同氏はピープル誌に語っている。「私たちは不平等を容認しない。個人的には私はフェミニストだ」と彼は付け加えた。「私たちは平等を支持します。私は、性別、人種、性的思考、政治的意見にかかわらず、平等であることを信じています。私たちは皆、非常に思いやりのあるやり方で一丸となり、チャンスを均等に割り、分け合い、お互いの意見をきくことが大切です」。
ドラマ「侍女の物語」のジョセフ・ファインズ氏は、「Time’s Upボタンを誇りに思う。それはナンバープレートのように重い。懸念を表明している強力な女性の中に立つことは誇りで、歴史的なキャンペーン、この変化を求める呼びかけが他の業界に影響を与えることを願っています」と、同番組がテレビドラマ部門作品賞を受賞した後に語った。
12ドルのこのピンは、被害者支援の基金への募金となる。この基金は既に1600万ドル以上に及んでいる。
◆女性俳優たちの活動
ピープル誌が男性俳優たちを好意的に捉えているのに対し、アトランティック誌は全く違った報道をしている。
多くの女優は同伴者として夫やパートナーではなく、ジェンダーや人種の平等を訴える活動家を連れてきたが、その一方、男性俳優はセクハラ加害者である映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏や「#MeToo」についてあまり尋ねられなかった。また、ナタリー・ポートマン氏がノミネートされた作品が「すべて男性」によるものと強調したとき、居心地悪そうに立ち回った。受賞のスピーチでは、男優らは母親や妻やガールフレンド、エージェント、素晴らしい食文化を持つイタリアに感謝を示した。ワインスタイン氏についてジョークを連発した司会のセス・マイヤーズ氏を除いて、ゴールデン・グローブの男優たちにとってはいつも通りビジネスの場であった。
ほぼ全員の参加者が同じ黒の衣装を着る「#WhyWeWearBlack」は授賞式史上初の試みだったが、それに対する態度では男性と女性に著しい違いがあった。女優たちは、黒を纏うだけでなく、スピーチの機会を利用し、アメリカや世界中におけるセクハラ暴力について慎重かつ包括的に語った。ドラマ「ビッグ・リトル・ライズ」で家庭内暴力の被害者を演じたニコール・キッドマン氏は、受賞スピーチで「女性の力」と虐待について語った。「私たちの話やそれを伝える方法によって変化を導き出すことができると信じているし、望んでいます」と述べた。一方、同番組で加害者役を演じたアレクサンダー・スカルスガルド氏は、「非常に才能のある」女性たちを称賛こそすれ、黒を着るムーブメントについて、さらには自身の作品のテーマについても言及しなかった。
唯一受賞スピーチで「#MeToo」について言及したのは、「侍女の物語」のエグゼクティブ・プロデューサーであるブルース・ミラー氏だった。彼は、「この部屋にいる、この国にいる、この世界にいるすべての人々へ、この物語が現実化するのを止めるための努力をし、それを続けてください」と述べた。
◆超特権的な生活を手放せない男優たち
ガーディアン紙のコラムニストのハドリー・フリーマン氏は、超特権的な生活を送る男優たちに対し批判的だ。本当に団結するのであれば、女優たちよりも多くの報酬を受ける映画の仕事を拒否できたとしている。
役をもらうために裸でのマッサージをワインスタイン氏に強要されず、何が行われているか知っていながらも、何も口出さなかったことを自白することもできた。しかし、こういった話をすることは、何かを犠牲にすることを意味し、特権の一部を放棄することになる。結局はそれができていないとフリーマン氏は伝えている。