ときめかなくてもOK スウェーデン式クールでドライな片付け術
近藤麻理恵氏のベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』を読む機会を逸してしまった、あるいは彼女の片付け術は短絡的すぎる、かわいらしすぎる、若い層向けすぎると感じる向きに、スウェーデン在住の「齢80歳から100歳の間」と自称するある女性の片付けについての独自の見解をご紹介しよう。
マーガレット・マグネソン氏の著書『The Gentle Art of Swedish Death Cleaning(スウェーデン式死の片付け術)』(スクリブナー社より2018年1月発売)は、ドライで非感傷的で時にブラックなスカンジナビア流のユーモアを交え、年配層(とその若い身内)向けに書かれている。
「誰でも年を取ります」とマグネソン氏は語る。「ですから、身辺整理を始めるのに早すぎるということはありません。体が言うことを聞かなくなる前に、気にしなければいけないたくさんの物や整理しなければいけないたくさんの面倒という負担から解放されてできることを楽しめるなんて、こんなに素敵なことはありません」。
“Death cleaning(死の片付け)”は、スウェーデン語“doestaedning”の逐語訳。マグネソン氏によると、通常65歳以上の人が行う片付けの習慣だ。体を動かす元気がまだあるうちに身の周りの持ち物を整理することで、死後に身内が遺品を整理する手間を減らすことができる。
「悲しいことではない」、元気が出てやりがいがあるというのが“死の片付け”のコンセプトだと彼女は記している。近藤氏のアドバイスのように「ときめく」ものを取っておくことはさほど重要ではなく、愛着のある持ち物が他の誰かをときめかせられるようにふさわしい場所を探すことを重視している。
プロのアーティストである著者の手による遊び心のある絵が満載の本書は、まるで友だちとお茶を飲みながら話しているかのように話題があちこちへ飛ぶ。その内容は、“死の片付け”の取り組み方から、年を取った家族をその気にさせる方法、整理の際に何を残すべきか、果ては“死の片付け”実行後、狭い空間に家具をどう配置するかに至るまで多岐にわたる。
両親、義理の両親、友人たち、そして夫の死後には自分のために“死の片付け”を行ってきたと語るマグネソン氏。寝室が5つの郊外の家から寝室が2つのストックホルムのアパートに収まるまで持ち物を減らしたという。
「自分のための死の片付けはやはりとても難しいですね」と認めるも、すぐに「自分以外の人のために何度も死の片付けをしてきました。私が死んだ後に誰かに同じことをさせるなんて耐えられません」と付け加える。
「子どもたちは全員(夫の)葬儀のために帰省しましたが、死の片付けに1年近くかかりました」と彼女は記している。「私は自分のペースで焦らずコツコツと作業しました。子どもたちが愛着あると言っていた物は覚えていましたから、誰も欲しがらない物を処分しつつ、子どもたちにあげる物を取り分けました」。
地下室から始めて、屋根裏、玄関の戸棚かクローゼットの順に進めるのがマグネソン氏のおすすめだ。
鑑定士に査定してもらい、売る物を決めた。そして、家族、友人、近所の人々を招き、欲しい物がないか見てもらった。物を見て回るときには、このランプは“ピーターに”、他の物は“チャリティーに”という具合になるべくたくさん分類できるよう付箋メモを携帯した。
「愛する人たちや友だちにあなたがしようとしていることを話してみましょう。喜んで手伝ってくれるかもしれませんし、ひょっとすると、不要品を引き取ってくれるかもしれませんし、ひとりでは動かせない物を運ぶのを手伝ってくれるかもしれません」と彼女は書いている。「あなたの好きな人たち(あるいは嫌いな人たち)が続々と本やら服やら食器やらを持って行ってくれるでしょう」。
新しいアパートに引っ越す予定のお孫さんやお友だちはいませんか? 家に招いてバッグや箱を用意しておけば何かしら持ち帰ってもらえるかも、と彼女は提案している。
近藤氏と同様、写真のような思い出の品は作業が終わるまで取っておくようマグネソン氏は勧めている。また、持ち物を分類し、一番思い入れのないもの(服や本など)から手を付けることを勧めている。
不要品の山を処分した後は、一部屋につき一週間かけて家の中に残っている物を片付けたとマグネソン氏は話す。
「こうすることで、慌てることなく自分のペースで死の片付けができたと思っています」と彼女は記している。
By KATHERINE ROTH, AP
Translated by Naoko Nozawa